熊本県のPTA会員、10年で15%減 児童生徒数の減少率より大きく 学校行事、プールの監視員…負担を敬遠
岡山県PTA連合会が、会員数の減少を理由に2024年度末に解散する。文部科学省によると、都道府県単位の組織が解散するのは全国で初めて。熊本県内でもこの10年間で会員が約15%減った。各小中学校のPTA組織は、保護者の負担軽減や活動の周知など対応を模索している。
岡山県PTA連合会はホームページで「会員の大幅減少に歯止めをかけることができず、25年度以降、活動が継続できないと判断した」との声明を出した。今年12月末に事業を終了し、日本PTA全国協議会から退会する。
熊本県内でも会員は減少傾向だ。13年度は熊本県PTA連合会(県P連)と熊本市PTA協議会(市P)合わせて13万961人(県7万6200人、市5万4761人)だったが、24年度は11万1716人(県6万8200人、市4万3516人)と、10年間で約2万人減っている。約15%の減少率は、同じ期間の児童生徒数の減少率(約6%)より大きい。
県P連などは、少子化に伴う児童生徒数の減少や共働きの増加に加え、PTAは任意加入が原則で入退会は自由との認識が保護者間で広がっているためとみている。学校行事への参加やプールの監視員など保護者の負担を敬遠する家庭も増えているという。
熊本市PTA協議会の濱石浩二会長は「コロナ禍で保護者同士のつながりが希薄になり、PTA活動の意義が問われている。子どものより良い学びの環境をつくるためにも、賛同してもらえる取り組みを進めることが必要」と話した。県P連は、保護者の負担軽減や学校との役割分担など組織を維持していくための協議を進める考えだ。
政令市移行に伴い12年度に県P連から分かれた熊本市を除き、県内の市町村立の小中学校は分校5校を含め計483校ある。県P連には義務教育学校や特別支援学校も含めた339校、熊本市Pには熊本大付属小学校を含め129校が加盟している。(堀江利雅、後藤幸樹)
「保護者会」に衣替え、「1人1役」廃止 活動見直す動きも
保護者や教職員の負担軽減のため、熊本県内でもPTAの在り方や活動を見直す動きが出ている。
熊本市東区の託麻西小では、活動の意義や目的を改めて考えようと2022年度からPTA活動をしていない。代わりに、学校は全保護者が対象の「保護者会」を設けた。学校内組織のため会費や外部との会合はない。卒業アルバムや修学旅行の業者選定などは各学級の代表者が担い、校内清掃と運動会の見守りは有志で取り組んでいる。
中山和臣校長(54)は「保護者や教員の負担軽減につながっている。PTAに頼らない教育環境をつくることも大事だ」と強調する。会則やPTAとの違いを記した資料を作り、年度始めの説明会で理解と協力を求めている。
PTAは任意団体で加入は義務ではない。熊本市教育委員会は21年3月、各学校長に任意性の周知や、加入の有無に関係なく児童生徒に平等に対応することを要請した。
中央区の城東小PTAは入退会が自由との周知を徹底。未加入の保護者向けに、PTA会費と同額の「協賛金」を任意で寄付できる制度を作った。保護者の約9割が会費か協賛金を支払っているという。
全保護者に役職を割り当てる「1人1役」も廃止した。参加を強制せず、保護者ができる範囲で関わる仕組みに変えた。協力が得られない事業は中止する。一方で、学校に泊まって防災について学ぶキャンプなどPTA主催の新たな取り組みも始めた。
町野久美子会長(44)は「学校と保護者が協力して子どもたちの成長を後押しする取り組みは必要。持続可能な活動ができるようにしていきたい」と話した。(後藤幸樹)
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