PTAの権限、執行部に集中…なぜ? コロナ禍で書面総会、委員会の廃止 会員負担軽減も「意見出せない」懸念

熊本日日新聞 | 2022年5月25日 07:00

変更された熊本市内の大規模中学のPTA会則。第9条に議決権行使書についての規定があり「未提出及び白紙提出は賛成に含むものとする」との文言がある

 熊本市内の大規模中学に子どもを通わせる複数の保護者から「PTAの運営方法が大きく変わり、執行部の一部に権限が集中している」との声が「SNSこちら編集局」(S編)に寄せられた。取材すると、新型コロナウイルス感染拡大防止のため書面による総会を開くなど、コロナ禍で大きく変容しつつあるPTA活動の姿が浮かんだ。

 この中学のPTAでは2020年度から「議決権行使書」を用いた書面総会が開かれるようになった。複数の保護者が問題視するのは、議決権行使書が未提出や白紙の場合も、議案への「賛成」に含まれるとの扱いだった。しかも賛成のうち何票が未提出や白紙だったかは一般保護者には明らかにされないまま。ある保護者は「これでは執行部の好き勝手にできてしまう」と危ぶむ。

 当初は20年度限りの対応とされたが、年度末の臨時総会を経て会則に盛り込まれた。さらに21年度末には、「一人一役」から必要な時に保護者の協力を募る方式への変更と同時に、PTA運営を担う運営委員会や役員選考のための委員会も廃止してしまった。

 「会員の負担軽減」が目的と説明されたが、会長や副会長に権限が集中する体制に。保護者からは「負担の軽減に配慮していただきありがたい」と歓迎する声の一方、「一般会員が意見を出せなくなる」との批判も寄せられた。

 この中学のPTA会長は熊日の取材に「委員会の廃止は過去に役員を経験した保護者から不要論が上がっていたから」と説明。一般保護者の負担軽減を考え、執行部で運営を進める形に変更したとした。同校の教頭も「PTA活動は過渡期で試行錯誤しながら運営している。ほかの学校も同じような対応だと思う」としたが、詳しい取材には応じないと答えた。

 書面総会のやり方は、実は熊本市PTA協議会がホームページにひな型を掲載したものだった。担当者は「詳細は把握していないが20年度、21年度を書面総会にしたPTAは多いのではないか」。ただ、ひな型は「あくまで参考資料」で活用は単位PTAに任せており、組織体制など運営にも介入していないとした。

 熊本大教育学部の藤井美保准教授(教育社会学)は「対面と書面、どちらが望ましいかなどは単位PTAごとに事情が異なるので一概には言えない。ただ、PTA運営では保護者が広く意見できる機会を保障するなど、民主的な手続きを踏むことが大切だと思う」と述べた。(岡本遼)

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