農地の買収や賃貸借契約解除、227ヘクタールに 県調査 半導体関連企業進出の菊池地域2市2町 「代替必要」122ヘクタール
半導体関連企業の集積に伴い、菊池地域2市2町で少なくとも計227ヘクタールの農地が、買収や賃貸借契約の解除といった影響を受けていることが28日、熊本県の調査で分かった。うち122ヘクタールは農家が代替地を必要としており、既存農地のマッチング支援に加え、新たな農地を造成するなどして確保するよう求めている。
この日、農地確保策を関係市町村と協議する連絡会議が県庁で非公開で開かれ、県が調査結果を報告した。
調査は、県が農協などと共同で5~7月に実施。台湾積体電路製造(TSMC)をはじめ半導体関連企業の進出が相次ぐ菊池市、合志市、大津町、菊陽町で、企業立地や道路建設による農地買収などの影響を受けていると思われる農家100戸を対象に直接聞き取り、面積を集計した。
県によると、農地227ヘクタールの用途は、酪農や肉用牛の飼料用作物が計119ヘクタールと半数を占めた。ニンジンといった露地野菜が62ヘクタール、芝が31ヘクタールなどだった。全体の8割は借地で、県は「経営規模が大きい生産者ほど地主に返却する借地面積も広く、特に影響を受ける」と分析している。
100戸のうち42戸(計122ヘクタール)は「代替農地が必要」と回答。大半は自宅から5キロ以内を希望している。このうち23戸(計80ヘクタール)は、新たな農地の造成を含む基盤整備で確保したいとした。「代替農地は不要」としたのは58戸で、うち28戸は自前で確保する意向を示した。
農地・担い手支援課は「農地整備などの対策を市町村と共に協議していく」としている。(馬場正広)
◆経営縮小や廃業の意向示す農家も
熊本県が菊池地域2市2町の農家を対象に実施した半導体関連企業の進出に伴う影響調査では、経営縮小や廃業の意向を示した農家もあった。後継者不在を背景に、経営基盤である農地の移転を迫られたことで、農家が営農を諦める可能性も出てきた。
調査した100戸のうち、経営者が60歳以上だったのは42戸。そのうち19戸は後継者がおらず、16戸が経営縮小や廃業を考えているとした。調査に協力した60代の男性は「後継者がおらず、農地がなくなれば辞めようと考えている。新たな場所を探す気力はない」と打ち明けた。
また、「代替農地は不要」と答えた58戸のうち、23戸は「経営規模を縮小して営農を続ける」と回答。酪農や肉用牛の飼料用作物を自作から購入に切り替えることで、農地減少に対応しようと考えている農家もいた。
農地確保を巡っては、台湾積体電路製造(TSMC)進出を機に農業関係者らが立ち上げた「県農業と半導体産業等の共存共栄に関する研究会」と県が7月に意見交換した会合で、大規模な「農業団地」整備を求める声が上がった。JAグループ熊本は、大津町にJA熊本経済連が所有する牧場跡地を代替地のモデルとして基盤整備するため、国による支援を要望している。
県農林水産政策課は「今後も農家のニーズを把握しながら、必要な分の土地を確保していきたい」としている。(馬場正広)
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