多肉植物アガベ 男性も「はまる」 熊本市の「珍奇植物の店」
昭和のレトロ感漂う河原町繊維問屋街(熊本市中央区)に、珍奇植物を扱う専門店が4月にオープンした。主な商品は「アガベ」と呼ばれる多肉植物の一種。聞けば、その独特なフォルムに魅せられる客の多くは不思議と男性なのだとか。「はまる」理由が知りたくて、店を訪ねた。
アガベは元々、メキシコなどの乾燥地帯に自生。中でも「アガベ・チタノタ」など小型の品種は、葉の周りの鋸歯[きょし]と呼ばれる切れ込みと、そこから伸びるとげが特徴。その形状の違いなどで、「シーザー」「煉獄[れんごく]」「ゴジラ」といった個性的な名前が付けられ、インテリアとして人気があるという。
「コロナ禍で外出できなかった時、SNSで見たアガベに一目ぼれした」という店主の辻山直樹さん(38)=菊陽町。趣味が高じて、「植物天國[てんごく]」の名で開店した。愛好家の間では「県内屈指の品ぞろえで、栽培も上手」と評判だ。「水やり、土の配合、室温などで姿形が変化する。外見はいかついけど、実は繊細」と話す。
土曜日限定で午後9時~午前0時の営業。8月中旬に店を訪ねると、常連客が次々と集まってきた。「ここのとげの曲がり具合最高」「完璧なフォルム」「この子株、将来性あるね」。4畳ほどの店内に、男たちが膝を突き合わせ〝アガベ談議〟に花が咲く。
開店当初からの常連で、自宅に約80鉢を飾っている会社員、境達郎さん(34)=北区=は「荒々しくて、力強いとげがかっこいい。花びらのように重なる葉と鋸歯が織りなす絶妙なフォルムも魅力で、時間を忘れて見入ってしまう」と話す。「手塩にかけた自信作をインスタグラムにアップするのも楽しい」
「仕事中に鏡に映ったアガベが目に入ると、テンションが上がる」と話すのは、美容室店長の錦戸優輝さん(37)=中央区。「プラモデルや骨董[こっとう]品を集めたりするみたいに、自分好みのアガベを次々とコレクションしたくなる」と「はまる」理由を語る。
常連客の中には中堅の警察官(41)も。自宅では100鉢ほど栽培しているという。「仕事から帰宅して、アガベを眺めると気持ちが安らぐ。一日の労をねぎらってくれる、癒やしの存在」と頰が緩む。
「仕事も家庭もある人たちが週に一度店に集い、共通の趣味で盛り上がれるところが最大の魅力かも」と境さん。アガベをこよなく愛する男たちの満ち足りた時間が、夜の問屋街に流れていた。(小野宏明)
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