熊本港への投資、県が意欲 半導体関連企業の進出に対応 新たにクレーン1基、ターミナルも拡張
熊本県は熊本市西区の熊本港で積極的な投資を続けている。半導体関連企業の集積や交通アクセスの改善による貨物需要の増加を見込んでいるためだ。積み降ろしに使うガントリークレーンを新たに1基投入するほか、貨物輸送の核となるコンテナターミナルの拡張工事も予定する。
「熊本港の物流拠点としての機能向上が、県経済全体の発展にとって極めて重要になる」。6月上旬、熊本港の岸壁強化事業の着工式。木村敬知事は意気込みを示した。
県の積極姿勢の背景にあるのが、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする半導体関連企業の集積だ。国などが中九州横断道路や熊本西環状道路といった交通網の充実に向け、アクセルを踏んでいることも追い風になっている。
2012年10月に静岡県から購入したガントリークレーンは、もともと清水港で使っていた中古品。使い始めから半世紀が経過し、劣化が目立つ。熊本県は今秋にも2基目の設置工事をスタート。13億5千万円を投じ、来年3月までには2基による運用を始める。主に新しいクレーンを使い、積み荷が多い時は既存のクレーンも動かす考えだ。
コンテナターミナルの拡張工事は24年度内に着手する方針。31年度までに3・3ヘクタールを埋め立てる。完了すれば、現状の1・8倍の埠頭[ふとう]用地を確保でき、コンテナ置き場が大幅に増える。
TSMC効果で増大した企業用地の需要に対応するため、熊本港の臨海用地の整備も促進。神戸港や韓国・釜山港と週3便往復している貨物船の増便や、新たな港との新規航路の実現にも取り組む。
新型コロナ禍で、熊本港のコンテナ取扱量は大きく減った。「一定数の貨物が博多港に流れたと考えられる」と県企業立地課。コロナ禍がピークを過ぎたことで、23年の取扱量(20フィート換算、空コンテナ含む)は前年比17・5%増の1万698個と回復基調に入った。この状況を踏まえ、県は投資の意欲を強めている。
1993年に開港した熊本港は軟弱な地盤を埋め立てる補強や、海底の土砂をすくい取る浚渫[しゅんせつ]工事を続けてきた。これまでに投じた額は総額約1800億円。新たな投資でさらに膨らむことになるが、県港湾課の菅知一郎課長補佐は「半導体関連企業の進出で、今後も確実に増えていく需要に対応するために必要な投資だ」と強調している。(樋口琢郎)
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