苓北町で「車泊」好評 町営駐車場整備、宿泊施設不足解消へ 観光客増や経済効果に期待
苓北町の富岡海域公園駐車場に整備された「RVパーク スマート」を拠点に、キャンピングカーなどで車中泊しながら観光する「車泊[くるまはく]」が好評だ。町には宿泊施設が少なく観光客の滞在時間の短さが課題となっていたが、車中泊しやすい環境を整えたことで町内の観光地への回遊性が生まれており、今後の観光振興へ期待が高まっている。
RVパークは、駐車場経営などの「トラストパーク」(福岡市)を代表とする共同事業体と町が、ホテルや旅館など宿泊施設以外の滞在方法を提案しようと、今年4月に開設。同公園の町営駐車場2台分のスペースを活用し、給電設備やテントを張れる芝生エリアを整備したほか、洗い場や展望デッキなどを新設した。料金は1泊3300円。
昨年夏には、町と天草市、長崎県南島原市、共同事業体が、各地を周遊してもらう実証実験を実施。RVパークでは、九州各地の9組21人が車やテントに泊まり、苓北町の富岡城やオリーブ園などを観光したという。
RVパークは雲仙天草国立公園内に位置しており、利用者からは、自然豊かで美しい海の眺望を称賛する声が寄せられた。一方で、「日曜に開いている飲食店が少ない」などの声も寄せられており、町は地元飲食店に協力を求める方針だ。
開設から6月末までに20組が訪れ、ゴールデンウイークだけで11組が利用した。町は「家族連れに限らず、日本一周している人が立ち寄って泊まるケースもある。RVパークの効果を実感している」と喜ぶ。
総事業費は約640万円。人件費もかからず、整備のハードルも低い。町の担当者は「ホテルの誘致は、アクセス面に課題があり難しかった。『車泊』であれば初期投資が少なく、自治体でも簡単に取り組める」と話す。
今年5月には、持続可能な共生社会の実現に向けた取り組みを評価する「第1回全国シェアリングシティ大賞」の特別賞を受賞。新しい施設を造るのではなく、利用者が少なかった町営駐車場を利活用し、新たな価値を見いだしたことなどが評価された。
町は観光だけでなく、災害時のボランティアの活動拠点などとしても利用する方針。今後について「2年後の国立公園指定70周年に向け、農家への民泊や陶芸体験などで町内各地を観光してもらうため、官民が連携して取り組みを強化していく」と意気込んでいる。(鬼束実里)
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