歴史的建築物「早川倉庫」、集客施設に変ぼう 保存活用へ熊本市が条例初適用 25年夏からゲストハウスやカフェに
熊本市は、1877(明治10)年に熊本城下町の古町地区に建てられた早川倉庫(中央区万町)について、「熊本市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を初めて適用した。建築基準法を満たさなくても用途変更や改修が可能になり、倉庫業を営んできた早川倉庫は、宿泊できるゲストハウス、物品販売、カフェ、イベントホールを備えた集客施設へと生まれ変わる。来春改修工事に着工、夏ごろ本格始動する計画。
同条例は2020年6月、城下町地区(新町・古町地区)や川尻地区を中心に、町屋などの歴史的建築物をまちづくりに生かし、将来に継承する目的で制定。1950年の建築基準法施行前に建てられた建築物が増改築などをする場合、一定の安全性を確保する代替措置を講じるなど要件を満たせば、同法の適用を除外する仕組み。歴史的建築物の価値を損なうことなく、保存と活用の両立を目指すという。
今回条例が適用されたのは、早川倉庫の建物群のうち「本宅」(木造2階建て延べ約850平方メートル)で、太い梁[はり]や土壁が歴史を感じさせる。1階にカフェ、2階にゲストハウス4室(9人分)を新設。これまでマルシェや音楽などのイベントを開いてきたスペースは、宴会も含め毎日利用できるイベントホールや物品販売店舗として活用する。
市都市デザイン課などによると、内壁を不燃材で覆う防火措置の代わりに、火気不使用とし自衛消防組織を設ける。2階から中庭に通じる避難はしごを3基新設し、安全に分散避難できる経路を確保する。
早川倉庫によると、元は明治期の熊本の産業発展に大きく貢献した岡崎家の酒醸造所だったが、1877年2月に西南戦争で焼失。わずか10カ月で再建された建物を後に早川家が引き継ぎ、1954年に倉庫業を開業。近年は城下町を象徴する建築物の一つとして存在感を増し、熊本市の景観形成建造物と歴史的風致形成建造物の指定を受けている。
地域文化の継承などに取り組む一般社団法人「KIMOIRIDON」とともに2年がかりで保存活用計画を練ってきた3代目の早川祐三さん(45)は「長年の悲願だった新たな活用の道が開けた。先人たちの営みの証しである建物を、地域に根差した新たなコミュニティー拠点として磨き、守っていきたい」と話した。(川﨑浩平)
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