健軍商店街の「玉屋」、70年の歴史に幕 熊本市東区 「くつろぎの場」失い、常連客も「寂しい」
熊本市東区の健軍商店街にある婦人服店「玉屋」が、6月末で70年の歴史に幕を閉じる。落ち着いた店内に並ぶシャツやズボンの数々を前に、社長の金村政市さん(80)は「店にくつろぎに来てくれていたお客さんに悪いな」と一抹の寂しさをにじませた。
玉屋は1953年、金村さんが9歳の時に父、賢九[けんく]さんが創業。当時は婦人服のほか紳士服、子ども服も店頭に並べており、学校に通う金村さんも店を手伝った。正月に向けて皆が服を新調する昭和の時代。年末には、向かいの店が見えなくなるほどの人が店内にあふれた。商店街は活気に満ちていた。「貧しかったけれど、良い時代でした」
店を継いだのは30代半ば。アパレル大手のブランド「アーノルド・パーマー」と「シンプルライフ」が店の二枚看板だった。5万~6万円のスーツが飛ぶように売れた。
潮目が変わったのは、バブル崩壊の数年後。ユニクロなど低価格の専門店や、大型ショッピングセンターの台頭で、「街の服屋」の存在感は徐々に薄れていった。「この20年は苦労ばかりでした」と振り返る。
それでも店を続けてこられたのは、常連客の「くつろぎの場」としての意義を感じていたから。店員と話すのを楽しみに、毎日来店する人もいたという。
80歳になった今年、ついに閉店を決意した。40年ほど前から店を訪れているという秋月多嘉子さん(82)=東区=は「旅行へ行く時のスーツを作ってもらったり、夫の背広を買ったりした。ふらっと入りやすい店がなくなるのは寂しい」。閉店を知り、駆け付けた客で、店は連日にぎわう。
商店街の往時から残る店は、文具店や果物店など5軒ほどとなった。「この場所で長くやってきて、商店街には本当に世話になった」と金村さん。これからも移りゆく商店街の未来を見つめていくつもりだ。(石井颯悟)
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