荒尾玉名は「大仏銀座」 戦後相次ぎ建立 浮かぶ平和への思い【クローズアップ】
荒尾市と玉名市には巨大なコンクリート製などの仏像が点在し、一部では「大仏銀座」とも呼ばれている。いずれも50年ほど前、地元の寺院などが建立したもの。訪ね歩くと、太平洋戦争や炭鉱事故の歴史、関係者の平和への思いが浮かび上がった。
最初に向かったのは荒尾市増永の荒尾観音。住宅街に建つ寺を囲むように、高さ5メートルほどの不動明王、鬼子母神、閻魔[えんま]大王など10体ほどが並ぶ。境内には、七福神や観音像もあり、自由に見学できる。
3代目住職の犬塚観照さん(64)によると、1965年頃から約10年かけて初代住職の故真観さんがほぼ独力で製作した。傷みがひどく取り壊されたものもあるが、最盛期には大小約100体があったという。
次に「荒尾大師」とも呼ばれる荒尾市平山の慈照院へ。木立の間から顔を出す弘法大師像はコンクリート製で高さ15メートル。像は寺の本堂を兼ねており、初代住職の故児玉修明さんが独力で造った。建立時は白色だったが、2年前に完成から50年を迎え、補修を兼ねて色付きに塗り直された。
児玉さんの孫で住職の末藤伝修さん(65)は「初代は戦時中、出征兵士を乗せた列車の祈禱[きとう]をしていた。戦争で離れ離れになる家族を目の当たりにした経験から平和を願い、建造を始めた。戦争のない世界への祈りが込められている」。
荒尾市から玉名市へとまたがる小岱山周辺まで足を延ばすと、山の斜面を利用して造られた巨大な「大釈迦座像」(玉名市山田)もある。両市の仏像群の中で最も大きく、草木の中から長さ7メートルほどの顔をのぞかせている。
さらに周辺では、「世界一の大きさ」という直径3メートル近い釣り鐘があることで知られる玉名市築地の蓮華[れんげ]院誕生寺奥之院にも、高さ13メートルの大仏が鎮座する。
小岱山には、仏像だけではなく、戦時中に三池炭鉱での強制労働で命を落とした朝鮮半島や中国出身者の慰霊塔もある。このうち荒尾市の「不二之塔」と「中国人殉難者供養塔」では毎年春に、供養が行われる。
さまざまな思いで造られた大仏群について、荒尾観音の運営に関わる池田親夫さん(77)=荒尾市=は「強制労働があった三池炭鉱や、石炭を原料に使う旧陸軍の火薬工場(荒尾二造)があった荒尾市とその周辺では、人々が戦後も戦争の暗い影を強く意識していた。こうした事情が仏像建立の背景にあるのではないか」と推察する。(大倉尚隆)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
【独自】旧川辺川ダム計画、正式廃止へ 熊本県、国土交通省に「異議なし」回答方針
熊本日日新聞 -
女子ダブルスの福島(坂本中出)、新ペアで手応え十分の勝利【バドミントン熊本マスターズ】
熊本日日新聞 -
バドミントン熊本マスターズ開幕 シダマツ初戦突破、16強入り
熊本日日新聞 -
シダマツ、逆転勝ち 底力見せる【バドミントン熊本マスターズ】
熊本日日新聞 -
うさぎ農園(合志市) 無農薬野菜200品目栽培、SNS通じ全国に直販 ドレッシングなども人気【地元発・推しカンパニー】
熊本日日新聞 -
女子ダブルス・廣上、加藤組(再春館製薬所)、自慢の強打さえる【バドミントン熊本マスターズ】
熊本日日新聞 -
熊本県実業団対抗柔道 男子団体1部は熊本刑務所Bが優勝
熊本日日新聞 -
肝臓で作られるタンパク質「セルピンA1」、エネルギーを消費する「褐色脂肪細胞」を活性化 熊本大の阪口助教らの研究グループ発見
熊本日日新聞 -
【首長誕生】人や企業へ…町の認知度高める 美里町長に4選した上田泰弘氏
熊本日日新聞 -
湯前町議10人決まる 初の無投票
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「損害保険」。11月14日(木)に更新予定です。