私のキャリア、今は家庭優先 熊本市の主婦 山置有希さん(32)【2024熊本県知事選 若手記者企画「熊本暮らし 先輩に聞いてみた」②】
現在27歳の記者の周りは結婚ラッシュだ。高校や大学の友人と集まると、話題は将来の話で持ちきり。結婚、出産、子育て、産休、育休…。ただただ楽しいばかりだったおしゃべりは一変、人生の選択を迫られているようで少し息苦しい。
熊本市中央区の山置有希さん(32)は、夫(33)と長女(6)、次女(3)の4人暮らし。主婦として子育てに奮闘しながら家族の生活を支える。24歳で結婚する前は大手銀行に勤めていた。
奈良県出身。関西の私大を卒業後、「幅広い業界や年齢層の顧客に携われる」と銀行を就職先に選んだ。サークル活動で磨いた英語ディベートの力を生かせるとの期待もあった。
京都の支店で行員生活のスタートを切った。投資信託や保険商品を扱い、相続手続きの手伝いをする。たくさんの人と知り合える毎日は刺激的だった。「資産の運用や整理は信頼関係を築かないと任せてもらえない。やりがいを感じて毎日楽しかった」と振り返る。
入行2年目の冬。サークルの先輩で、約5年間付き合っていた現在の夫にプロポーズされた。
夫は全国展開する製薬会社に勤め、当時は岐阜に住んでいた。「今は別居婚や男性が家庭に入るケースも珍しくないけど、当時の私には考えられなかった」と山置さん。岐阜への転勤を希望したが通らず、やむなく退社を決めた。
国立社会保障・人口問題研究所が昨年8月に公表した全国家庭動向調査によると、配偶者がいる女性で「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」に賛成した割合は29・5%。調査のたびに賛成は減り、2018年の前回(38・1%)から8・6ポイント低下した。
一方、「子どもが3歳くらいまでは母親は仕事を持たず育児に専念したほうがよい」に賛成した割合は61・0%。家事や育児は女性が担うべきだという意識は社会全体に根強く残る。
記者はまだ独身だが、近い将来の結婚や子育て、仕事との両立を考えると漠然とした不安が浮かぶ。
山置さんは結婚の翌年に長女を出産。初めての子育ては分からないことだらけで、夜泣きがひどい娘を一晩中抱っこして眠れない日が続いた。夫は育児に協力的だけど、仕事で深夜に帰宅したり、出張で不在がちになったり。
「両親とも働いていて手伝いに来てもらえる状況ではなく、岐阜に知り合いもいない。1人で育児と向き合う日々に行き詰まっていた」と当時を振り返る。
少しずつ外出ができるようになったのは、生後半年が過ぎた頃。公共施設や公園に足を運ぶと、同じように悩みを抱える母親たちがたくさんいた。「ママ友たちとの輪が広がるにつれて、前向きな気持ちで長女と接することができるようになった」と言う。
20年4月、夫の転勤に伴い熊本に移り住んだ。熊本の印象は「子育てしやすい街。自然が豊かで、子どもにいろんな体験をさせることができる」。今回の知事選では、候補者が掲げる子育て支援や雇用対策に注目している。
「子育てに関わる負担をどう軽減するのか、育児でキャリアを中断せざるを得ない場合に、どのような支援を考えてくれているのかが気になる。例えば転勤の際に、共働きの夫と妻が同じ地域に赴任できるようにするとか、家庭と仕事が両立できる勤務制度が広がってほしい」
それでも山置さん自身は、「もし岐阜への転勤がかなっていたとしても、出産のタイミングでは仕事を辞めていたと思う」と言う。仕事上のキャリアを積む道を選ばなかったことに後悔はない、とも。なぜ?
「子育てを仕事と同じように頑張りたいと思えたのが大きい。家庭を優先することで社会とのつながりは一時的に薄くなるかもしれないけれど、それで自分の価値が下がるわけじゃないから」
ただ、子どもが手を離れた後の人生を意識していないわけではない。次女が小学校に入学したら何か仕事を始めるつもりで、法律関係の資格取得の勉強にいそしんでいる。
「当面は家庭を優先したい。だけど自分の時間も大切にして、子どもたちが成長したら徐々に仕事の方にシフトしたい。社会とのつながりを、また濃くしていけたら」。山置さんがいま描くライフプランだ。
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