宮崎の節分に欠かせぬ「ママー」 熊本産キャンディー、鹿児島でも定着 昨年で生産中止、惜しむ声も
宮崎、鹿児島両県の一部地域では節分の際、大豆の代わりに熊本市南区の「オークラ製菓」が手がけるソフトキャンディー「乳菓(にゅうか)ママー」をまく習慣がある。なぜ節分にキャンディーなのか。その理由を調べていくと思いがけない結末が待っていた。
「乳菓ママー」は1971年の創業時から看板商品で、1袋当たり120グラム(約22個)入り270円。全国のスーパーやインターネット通販で10月~2月限定で販売。濃厚なミルク味と、ねっとりした独特の食感で、「懐かしい」と年配者を中心に人気を博した。
同社の笠井康仁社長(53)によると、宮崎県などで節分でまく習慣が始まったのは約30年前。同県都城市に本社がある菓子問屋が打ち出した節分キャンペーンが発端だったという。「バレンタインのチョコレートのように、節分と言えばあめという文化を作りたい。ママーを使わせてほしい」の提案を受け商品を提供。問屋の地元のほか、隣接の鹿児島県曽於市まで広がったという。
「ただ今年の節分には、ママーは提供できない」と笠井社長は言う。約50年間、修理しながらママーを作り続けた機械が故障。別の製造ラインでの生産を試みたが、味をうまく再現できなかったという。同社は2023年2月、同じく創業時からの看板商品だった「田舎飴(あめ)」「いも飴」とともに生産を中止した。
宮崎県からは惜しむ声も。都城市の保育園管理者の女性(41)は、幼い頃からママーに親しんできた。スーパーなどにママーが並ぶ光景はこの時期の風物詩。生産中止を知り、「クリスマスのチキンのようにママーを見て節分を感じていた。寂しい」。
地元のスーパーではスタッフが生産中止に衝撃を受けながらも、別のミルク味のソフトキャンディーを用意したという。ある店長は「ママーがない節分はどうなるのだろうと思ったが、代替品の売れ行きもよく、あめをまく文化が浸透していると感じる」と話す。
オークラ製菓の笠井社長は「節分の〝必需品〟として親しまれ、ママーを愛してもらえてありがたい。いつかまた、復活させたい」と話している。(東有咲、取材協力・宮崎日日新聞)
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