能登被災地の映像、熊本地震を思い出しつらい…「共感疲労」に注意を 専門家「リラックスする時間を」
石川県で最大震度7を観測した能登半島地震の報道に関し、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に、「熊本地震を思い出してつらい」という声が寄せられた。メンタルヘルスの専門家は「被災の映像を繰り返し見ると、『共感疲労』を起こす可能性がある」として注意を呼びかける。
S編に声を寄せたのは熊本市のパート女性(39)。2016年の熊本地震では益城町で被災した。能登半島で建物が倒壊したニュース映像などを見ると、余震におびえ続けた当時の恐怖がよみがえり、自分が現在無事でいることにも罪悪感を覚えるという。「自宅ではテレビを見るのを控えるようにしているが、自分も助けてもらったんだから無関心ではいけないと考え、ネットを見続けてしまう」と訴えた。
熊本地震の後、益城町などの小中学校で子どもの心のケアに当たった臨床心理士、坂上由香理さん(熊本市東区)は「地震後に支援や励ましを受けた人は特に被災地に寄り添わなければならないと感じ、共感疲労に陥りやすい」と指摘する。
共感疲労とは、他者に共感するあまり、あたかも自分も同じ苦しみを受けているように感じ、心身が疲れてしまうこと。無意識に体に力が入る緊張状態が続き、不眠につながる場合もある。
映像は脳への刺激が強く、心身への影響が大きい。被災体験がなくても、テレビを見続けている人や共感しやすい人、ストレスを受けやすい子どもらは注意が必要だという。
対処法としては、テレビやネットの映像はつけっぱなしにせず、時間を制限したり、定時の短いニュースだけ見ると決めたりする。
リラックスするには深呼吸が効果的。緊張していると呼吸が浅くなるが、ゆっくり息をすることで気持ちが落ち着く。体にぐっと力を入れた後、力を抜く「筋弛緩[しかん]法」もお勧めだ。感じていることを親しい人に話したり、日記に書いたりすることも安心につながるという。
坂上さんは「被災地の苦しみを考えると自粛しがちだが、リラックスできる楽しい時間を持ち、心身の健康を保ってほしい」と話している。(清島理紗)
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