【この人に聞く・熊本地震⑤】JVOAD事務局長の明城徹也さん 被災地の課題は? 「自主運営できる避難所に」
熊本地震の被災地で活躍するボランティア団体の調整役を担う「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD=ジェイボアード)」は、前震発生の翌日から熊本に入り、NPOや行政、社会福祉協議会などとの連携に取り組んできた。明城徹也事務局長に、ボランティアや支援の在り方を聞いた。(中村悠)
-JVOADはどのような経緯で設立されたのですか。
「2011年の東日本大震災では、いろいろな支援団体が全国各地から入ったが、動きがばらばらだった。行政や団体間でもっと連携が取れていれば、さらに効果的な支援ができたのではないか。そう考えたのがJVOAD設立のきっかけだ」
「さまざまな団体に呼び掛け、ことし6月の設立に向けて準備を進めていた最中に、熊本地震が起きた。本格的な活動は今回が初めて。各団体の自主性を重んじ、特徴を生かしながら力を発揮できる情報を提供したい」
-具体的な活動は。
「支援の重複や抜けがないよう、益城町など現地に入ったボランティア団体から細かいニーズや課題を聞き、情報を共有している。各団体が集まる『火の国会議』を毎日開いているほか、内閣府や県と頻繁に情報交換している。このため行政との連携はスムーズで、調整役の人員を効率的に配置できたと考えている。これまでに延べ200団体ほどが参加した」
-熊本地震の被災地が抱える課題は何でしょうか。
「一番の課題は避難所運営だ。行政だけで避難者のニーズにきめ細かく対応できないし、一方で罹災[りさい]証明書の発行など、役場の仕事も増えている。これからは、避難者の自立と避難所の自主運営が重要となる。被災者や避難所の状況は常に変わり、ニーズも変化している。行政の支援から漏れる被災者も出てくるだろう」
「そのときにボランティアが受け皿をつくれるかが鍵。東日本大震災では被災者から選ばれたリーダーが避難所を指揮したが、高齢者が多い熊本の避難所でうまくいくとは限らない。社会情勢を考え、どのような形が望ましいか考える必要がある」
-これからの支援に欠かせないものは何ですか。
「避難者の生活が仮設住宅に移れば、見守り体制や生きがいづくり、地域コミュニティーの問題などが重要になる。これまでは、民間の支援が益城町に集中したように感じるので、西原村や嘉島町、御船町などでもボランティア団体やNPO、NGO(非政府組織)をさらに受け入れやすい態勢を作ってもらいたい」
「過去の災害をきっかけに、市民活動が盛んではなかった所でも、町づくりのNPOなどが設立されたケースも多い。熊本でも地元主導で、住む人にとって良い環境をつくってほしい」
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