【この人に聞く・熊本地震⑤】JVOAD事務局長の明城徹也さん 被災地の課題は? 「自主運営できる避難所に」
![◇<b>みょうじょう・てつや</b> 1970年、福井県生まれ。米ワシントン州立大卒。ゼネコン勤務を経て、96年に海外で難民支援のNGO活動を始める。2011年の東日本大震災で、ボランティア団体へ助成金を出す中間支援NGO団体に所属。行政とボランティアのつながりに着目し、JVOAD設立を呼び掛けた。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160529TAN000146000_03.jpg?itok=06i5j_1C)
熊本地震の被災地で活躍するボランティア団体の調整役を担う「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD=ジェイボアード)」は、前震発生の翌日から熊本に入り、NPOや行政、社会福祉協議会などとの連携に取り組んできた。明城徹也事務局長に、ボランティアや支援の在り方を聞いた。(中村悠)
-JVOADはどのような経緯で設立されたのですか。
「2011年の東日本大震災では、いろいろな支援団体が全国各地から入ったが、動きがばらばらだった。行政や団体間でもっと連携が取れていれば、さらに効果的な支援ができたのではないか。そう考えたのがJVOAD設立のきっかけだ」
「さまざまな団体に呼び掛け、ことし6月の設立に向けて準備を進めていた最中に、熊本地震が起きた。本格的な活動は今回が初めて。各団体の自主性を重んじ、特徴を生かしながら力を発揮できる情報を提供したい」
-具体的な活動は。
「支援の重複や抜けがないよう、益城町など現地に入ったボランティア団体から細かいニーズや課題を聞き、情報を共有している。各団体が集まる『火の国会議』を毎日開いているほか、内閣府や県と頻繁に情報交換している。このため行政との連携はスムーズで、調整役の人員を効率的に配置できたと考えている。これまでに延べ200団体ほどが参加した」
-熊本地震の被災地が抱える課題は何でしょうか。
「一番の課題は避難所運営だ。行政だけで避難者のニーズにきめ細かく対応できないし、一方で罹災[りさい]証明書の発行など、役場の仕事も増えている。これからは、避難者の自立と避難所の自主運営が重要となる。被災者や避難所の状況は常に変わり、ニーズも変化している。行政の支援から漏れる被災者も出てくるだろう」
「そのときにボランティアが受け皿をつくれるかが鍵。東日本大震災では被災者から選ばれたリーダーが避難所を指揮したが、高齢者が多い熊本の避難所でうまくいくとは限らない。社会情勢を考え、どのような形が望ましいか考える必要がある」
-これからの支援に欠かせないものは何ですか。
「避難者の生活が仮設住宅に移れば、見守り体制や生きがいづくり、地域コミュニティーの問題などが重要になる。これまでは、民間の支援が益城町に集中したように感じるので、西原村や嘉島町、御船町などでもボランティア団体やNPO、NGO(非政府組織)をさらに受け入れやすい態勢を作ってもらいたい」
「過去の災害をきっかけに、市民活動が盛んではなかった所でも、町づくりのNPOなどが設立されたケースも多い。熊本でも地元主導で、住む人にとって良い環境をつくってほしい」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
熊本・美里町で新鉱物発見、「不知火鉱」と命名 東京大物性研究所など レアメタルのロジウムが主成分
熊本日日新聞 -
「全容を明らかに」 元城南町議殺害、発生3年で容疑者逮捕 近隣住民に安堵感
熊本日日新聞 -
熊本空港、貨物便が苦戦 取扱量はコロナ禍前の半分 県、時間延長など機能強化へ
熊本日日新聞 -
北里柴三郎と恩師の強い絆、文面に 小国町の記念館、手紙複製を展示
熊本日日新聞 -
長崎次郎書店(熊本市)休業前最後の営業終える 150年の歴史に区切り 常連客ら別れ惜しむ
熊本日日新聞 -
大津高8発大勝 7連勝で首位堅持 サッカー高円宮杯U-18プレミア西地区
熊本日日新聞 -
フォレストリーヴズ熊本は10位 バレーボールのVサマーリーグ西部大会
熊本日日新聞 -
一般男子は熊本刑務所Aが連覇 熊日旗争奪熊本県一般剣道
熊本日日新聞 -
【新札の顔・柴三郎 偉人の残像㊥】「光る縁側」医学者の原点 今も地元児童ら雑巾がけ
熊本日日新聞 -
元城南町議殺害、強盗殺人疑いで男2人を逮捕 熊本県警
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
「すべての道は熊本に通じる」とは、蒲島郁夫前知事が熊本県内の道路整備に向けた意気込みを語る際に使ってきたフレーズ。地域高規格道路などの骨格的な道路や鉄道網は、地域・産業の活性化はもちろん大規模災害時の重要性も注目されています。連載企画「移動の足を考える」では、熊本県内の〝足〟の現在の姿を紹介し、未来の形を考えます。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指す記者と一緒に楽しく学んでいきましょう。
※次回は「相続・贈与は難しい」前編。7月12日(金)に更新予定です。