「断られた車体コーティング、別名目で潜らせて請求」 ビッグモーター元営業社員が証言 熊本県でも問題行為か 厳しいノルマと歩合制で感覚まひ
保険金の不正請求などが明らかになった中古車販売大手ビッグモーター(東京)に3年前まで勤めていた元社員の男性が8日までに熊本日日新聞の取材に応じ、同社の厳しい成績主義を背景に、自身も手を染めた営業上の問題行為を明らかにした。客に断られた車体コーティングを、別の名目で潜り込ませて請求するなどしていたという。
男性は熊本県内在住の20代。県内外の同社店舗で営業担当として中古車の買い取りや販売をしていた。
ある時、コーティングは不要と断る客がいたが、先輩社員から「諸経費」として見積総額に入れ、契約後に内部で見積書を書き換えてコーティングを施工するよう指示を受けた。
「明らかな不正だと思ったが、5万~10万円はするコーティングは大きな収入で、必ずセットで売るように指示されていた」
その後、自身でも数件、同様の手口を使ったという。そのため、客には諸経費を含む総額の見積書は最後まで示さないのが慣例だったという。
同様の手法は勤務した県内外の複数の店舗でも使われており、「上からの指示ではないが、コーティング以外にも見積書の書き換えは誰でもやっていて、店長も黙認していた」と話す。
また、別の店舗から車を取り寄せて売ろうとした際、「事故車」や「修復歴」の表示はないのに、車の底面に事故による穴が開いていた。さすがに元の店舗に送り返したが、先輩社員からは「軽微な修復で済むならそのまま販売している」と言われたという。
男性は、背景に厳しいノルマがあったとする。「売り上げが落ちたり、コーティングなどのオプション契約が取れなかったら、大勢が入っているLINEグループで『殺す』『すぐにやめろ』などと叱責[しっせき]されていた」という。
一方で給料は歩合制で、売り上げさえよければ20代でも月収100万円ほどの月も。辞める直前には感覚がまひしており、「世間のルールより会社のルールで動いていた。今回、営業の不正はあまり表沙汰になっていないが、徹底的に調べるべきだ」と訴えた。
ビッグモーター本部に男性が関わった行為について問い合わせたが、「個別の事案については回答を控える。具体的な情報を把握した事案については適切に確認、対応を進める」とした。
車両の傷を偽装 「ディーラーでも」「今は写真のみ」
車の修理を巡る保険金不正請求問題は、ビッグモーターだけにとどまらない可能性もある。
十数年前まで県内の大手自動車ディーラーで「サービスフロント」をしていた熊本市の男性(50)は「修理費の保険請求の際、チョークや水性ペンで傷痕を伸ばしたり、木工用接着剤を付けて飛び石の傷痕に見せたりして写真撮影し、水増していた」と明かす。特に台風などの災害時には保険会社もほぼノーチェックで「どの業者も必ず水増しをしていた」と話した。
40年近く保険代理店の仕事をしている天草市の70代男性は「昔は少額の修理でも内容を調べる保険会社のアジャスター(調査員)が現地に来ていたが、最近はどの会社も来なくなり、写真を送るのみになった」と問題の背景を指摘した。(堀江利雅)
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