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助かったのは私と兄だけ 長六橋近く、10人ほどの遺体にむしろ 2階の畳の上でじっと辛抱 「仏壇だけは」と台に 【70年前の記憶「6・26」】

熊本日日新聞 2023年7月4日 05:00
「6・26水害」の発生から一夜明けた子飼橋左岸の一帯。住宅は濁流に流されて跡形もなくなっていた=1953年6月27日、熊本市
「6・26水害」の発生から一夜明けた子飼橋左岸の一帯。住宅は濁流に流されて跡形もなくなっていた=1953年6月27日、熊本市
助かったのは私と兄だけ 長六橋近く、10人ほどの遺体にむしろ 2階の畳の上でじっと辛抱 「仏壇だけは」と台に 【70年前の記憶「6・26」】
松村清さん
松村清さん

白川に流され気が付けば岸に 松村清さん(94)=合志市須屋

 

 大学を卒業し、県庁への入庁を控えて熊本市大江地区の白川沿いの実家にいました。白川が増水し、夕方になると近所の人が集まってきました。周りは平屋が多く、2階建てのわが家に避難してきたわけです。

 午後10時ごろでしょうか、白川の左岸がえぐられて水がどーっと流れてきました。家が浮き上がり、2階にいた人たちが水に巻き込まれました。家族8人を含めて30人ほどいたと思います。「あー」という断末魔の叫びが聞こえました。

 私もあっという間に流され、目の前が真っ暗に。その後、大甲橋や銀座橋を過ぎ、大きなエノキの枝につかまりましたが、力尽きて再び流され、生きることを諦めました。おやじやおふくろの顔が浮かびました。

 急に流れが止まったかと思うと、土を握っていることに気づきました。岸に流れ着き、助かったんだと思いました。場所は思い出せませんが、30分ほど流されたんじゃないかな。パンツのひも以外は全てちぎれ、裸一貫でした。家族で助かったのは私と兄だけです。

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