車道のド真ん中に鳥居、なぜ? 熊本市の藤崎八旛宮 戦後市街地の変遷見守る
![藤崎八旛宮の参道と国道3号の交差点。鳥居の位置関係から、参道側から国道3号に出る写真左端の左折レーンが、特に幅が狭くなっている=熊本市中央区(画像の一部を加工しています)](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2023-06/IP230620TAN000077000_02.jpg?itok=C8MnIWSD)
![車道のド真ん中に鳥居、なぜ? 熊本市の藤崎八旛宮 戦後市街地の変遷見守る](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2023-06/IP230622MAC000001000_00.jpg?itok=v64T_g35)
![1930年ごろに建てられた当時の藤崎八旛宮の大鳥居。写真奥に続く参道は土がむき出しの歩道で、現在の車道は戦後に整備されたという(藤崎八旛宮提供)](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2023-06/IP230620TAN000051000_02.jpg?itok=ZQjeJKs1)
「藤崎八旛宮(熊本市中央区)の参道は、大鳥居の柱で車道が分断されていて狭くて通りづらい。どうしてこんな特殊な形状になったのか」。SNSこちら編集局(S編)に寄せられた声から経緯を調べると、〝車社会〟化していった地域の歴史が浮かんだ。
秋季例大祭の「馬追い」で有名な藤崎宮。大鳥居は境内から続く車道と国道3号の交差点に立つ。コンクリート製で高さ、幅はともに10メートルほど。鳥居の下は2本の柱を避けるように、片側2車線が通っている。
S編に投稿した玉名市の男性(55)は以前、宅配の仕事で中型トラックで鳥居の下を通ったが「参道から国道3号への左折レーンが狭くて通れず、直進するしかなかった。公道として問題はないのか」とした。
実際、左折レーンの柱と歩道の間を測ってみると狭い所で約1・9メートル。普通車は通れるが、どの車も減速して慎重に左折している。柱には車でこすったような黒い跡も残っていた。
藤崎宮を訪ねた。「鳥居と車道の形状が珍しいという指摘は時々あります。まずは鳥居ができた当時の写真を見て下さい」。権禰宜[ごんねぎ]の藤岡敬士さん(41)が1枚の白黒写真を見せてくれた。
藤崎宮は明治時代、西南戦争をきっかけに熊本城の隣接地の藤崎台から現在地に移転した。大鳥居が完成した年月の正確な記録はないが、社殿などの増築が始まった1935年より少し前だったという。当時の参道は未舗装で土がむき出しの「歩道」だった。
太平洋戦争時の熊本大空襲では、市街地の多くが焼失したが、大鳥居は難を免れた。「車道」の整備は戦後の1964年のこと。熊本市に参道の土地を無償で貸す形で市道となった。藤岡さんは「戦後復興や参道周辺の宅地開発、車の普及に合わせて、参道を生活道として使う需要が高まり、鳥居を避ける形で車道を整備したのでは」とした。
熊本市土木総務課によると、交通量の多い私道などを住民の要望で市道に認定するケースはある。その場合、土地は市に寄付する形が一般的だ。一方、市が民間の土地を借りて市道として管理しているのは、藤崎宮と健軍神社(東区)の参道の2例のみという。
車道の幅員は国の道路構造令に基準があり、交通量の少ない生活道路の場合は1車線2メートル以上だ。しかし地形や地域の状況に応じて個別に設定することは可能で「藤崎宮とは現状の大鳥居の位置のまま市道を通す契約で、現状の幅員で法令上も問題ない」という。
藤崎宮の藤岡さんは「幅の広い車は参道から左折せず、直進や迂回[うかい]して安全運転に気を付けてほしい」と呼びかけた。(堀江利雅)
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