コロナ特措法改正 「罰則」には慎重な議論を

01月14日 09:18

 政府が新型コロナウイルス特別措置法改正案の概要を示した。

 緊急事態宣言の際の都道府県知事による休業や営業時間短縮要請に強制力を持たせるため、罰則と給付金支援を盛り込む。宣言の前段階として、感染のまん延防止策を講じなければ宣言が避けられないと判断した場合の「予防的措置」も新設する。この段階でも命令を拒めば罰則の対象となる。政府は18日召集の通常国会に改正案を提出し、早期成立を目指す。

 迅速で強力な対策に取り組むのが狙いだが、休業要請などに罰則で強制力を持たせると、私権の大幅な制限につながる。もともと現行法は権利制限は必要最小限にとどめるべきだとしている。慎重な議論が必要だ。

 特措法改正は、最初の緊急事態宣言が出された昨春の第1波当時から全国知事会や与野党が要求していた。

 現行法は要請に応じない事業者の名前公表や行政処分に当たる休業指示はできるが、罰則がなく実効性に疑問の声があった。また、要請を受け入れた場合に協力金を支給する制度は、一部都道府県が既に導入。政府もこれを財政支援してきたが、金額は都道府県の財政力によって異なるため、格差が生じていた。

 給付金支援と罰則をセットにした改正は、これらの改善も狙いだが、罰則とは本来、犯罪行為をした悪意ある人に科すものだ。家族や従業員を守るため、あるいは経営破綻を避けるために、どうしても休業できない人はいよう。そうした人まで罰則を使って強制し、生活を奪うことが可能なのか。

 むしろ、協力してもらうにはどんな手当てが必要か、という視点から制度を組み立てることが大事だ。十分な補償がない罰則では理解は得られまい。

 政府は感染者が入院勧告を拒否した場合に刑事罰を科す感染症法改正も検討しているが、これも大きな問題をはらむ。介護や育児で入院できない人もいるはずだ。そうした人たちまで罰則で入院を強制するのか。現状では逆に、感染が判明しても医療施設の不足で待機状態の人が増え続けている。その矛盾をどう説明するのだろう。

 首都圏4都県に始まった緊急事態宣言の再発令は11都府県へと拡大。熊本県も感染者の急増を受けて、14日に独自の緊急事態宣言を発令する。

 その間、政府は「規制を強めれば経済再生が遠のく」「私権を制限すれば休業補償がかさむ」とばかりに後手の対応が目立った。

 菅義偉首相が「給付金と罰則をセットにすれば実効性が上がる」として特措法改正に方向転換したのは昨年末。「Go To トラベル」停止判断の遅れ、内閣支持率急落への危機感があったのだろう。自らの判断ミスの責任を、罰則導入で国民に肩代わりさせているようにも映る。

 「公共」を盾に政府が私権を制限する-。無関心であっては権力乱用に道を開く。過ちを繰り返してはならない。

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