核兵器なき世界へ 連携し再スタートの年に

01月11日 07:09

 2021年は年明け早々、核を巡る二つの大きな動きに注目が集まる。一つは、岐路に立つイラン核合意の行方。もう一つは、22日に迫る核兵器禁止条約の発効である。オバマ前米大統領が掲げた「核兵器なき世界」に向け、今こそ各国が連携し再スタートの年にしなければならない。

 核を巡る国際秩序はさまざまな要因で不安定化しており、立て直さなければ人類の未来が危うい。

賭けに出たイラン

 そんな中で4日、イランが核合意の制限を大幅に超過し、濃縮度20%のウラン製造という強硬策に踏み切った。ここまで高めれば技術的には核兵器級の90%に容易にたどり着くとされ、バイデン米新政権に制裁解除を迫る戦略である。20日の米政権交代を前に、保守強硬派が主導し賭けに出た。

 イランと米欧などとの間で核合意が成立したのは15年。イランが核開発の大幅制限を受け入れる見返りに、米欧などは厳しい経済制裁を解除する-というものだ。しかし、トランプ政権は、これを一方的に離脱。イランと敵対するイスラエルとアラブ諸国との関係正常化を仲介するなどイラン包囲網を形成し、圧力を強めてきた。

 イランの国内事情もある。イスラエルの関与が疑われるイラン人核科学者暗殺事件を機に、国会で多数派を占める保守強硬派が昨年12月、核開発の拡大を政府に義務付ける法律を成立させた。穏健派ロウハニ政権は、濃縮度引き上げを遅らせて米新政権との対話を模索しようとしたが押し切られた。

鍵を握る米新政権

 核合意に復帰しイラン核開発を制限する枠組みの再構築を目指すバイデン新政権は、この強硬策で思惑が外れた。米議会にはイランに厳しい意見が広く浸透。イランが求める制裁解除には慎重にならざるを得ない。バイデン氏は就任早々、難しい判断を迫られることになるが、速やかに復帰し次のステップに進んでほしい。関係国は復帰への環境づくりに努めるべきだ。

 というのも、イランは6月、穏健派ロウハニ氏の任期満了に伴う大統領選を予定。このままでは反米保守強硬派の政権が誕生する可能性も十分ある。対立か融和路線か、瀬戸際ともいえる。

 核を巡る不安定化要因である北朝鮮の存在も不気味だ。朝鮮中央通信は9日、金正恩[キムジョンウン]朝鮮労働党委員長がバイデン新政権を「最大の主敵」とし制圧、屈服させると、米国への対決姿勢を鮮明にしたと報じた。核戦力の増強方針も表明。核による先制攻撃を排除していないことが明らかになった。

 トランプ氏は米朝首脳会談を計3回行い、北朝鮮の核実験や大陸間弾道ミサイル発射実験は抑えたが、非核化は一向に進まなかった。イランでつまずけば、影響は北朝鮮にも及びかねない。

 一方、発効する核兵器禁止条約は核兵器を違法とする初の国際規範だ。製造、実験、配備、使用などを世界的に禁止。保有も禁じ、廃絶を掲げる。核保有国側は条約に縛られないとの立場だが、軍縮を迫る強い圧力になろう。

 そして何より、「核兵器なき世界」を宣言したオバマ前大統領時代の副大統領がバイデン氏である。実現は容易ではないが、発効は極めて大きな一歩である。

前文にヒバクシャ

 条約は前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」とうたう。しかし、菅義偉首相は7日、条約に日本として署名しない考えを改めて表明。締結国会議へのオブザーバー参加も「慎重に見極める必要がある」とした。

 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は昨年、コロナ禍で延期され、今年8月に開かれる予定。日本は「唯一の戦争被爆国」として、責務を果たすべきだ。

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