1月25日付

01月25日 09:18

 きょうは左遷の日。何やら物騒な記念日だけど、菅原道真が大宰府に左遷された日と聞けば納得がいく。901年というから千年以上も前の話。サラリーマンに転勤は付き物で、悲哀も世の常ということか▼ここ数年、友人からの年賀状に「定年」と書き添えてあるのが交じるようになった。その度に、お互いそんな年代になったのだと感じ入る次第。勤め人の宿命から解放される記念日に違いないが、一抹の寂しさを共有する瞬間でもある▼「5万回斬られた男」の異名を取る俳優福本清三さんの追悼記事が14日付朝刊に載った。15歳で東映京都撮影所に入り、77歳で亡くなる直前まで斬られ役一筋。名は知らずとも顔に見覚えのある人は多いはず。60歳の定年を前に出した自伝でこう語る。「たった一人でいいから『あいつ斬られ方うまいやないか』と思ってくれたら、それでええ」▼本は『どこかで誰かが見ていてくれる』創美社。だが、聞き書きをしたライターは後書きで、「福本さんは誰も見てくれてはいないことを知った上で、ここまで努力してきたのではないか」と締めくくる。「代表作なし」と添えて▼しかし、実際は違った。定年後も一斬られ役を続け、71歳の時に映画『太秦[うずまさ]ライムライト』で人生初の主演。現実と重なる哀愁を帯びた大部屋俳優を演じた。集大成といえる、えび反りで倒れる場面が印象深い▼カナダの国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。主役抜てきも男優賞も、誰かが見ていたことの証しである。定年は通過点だった。

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