「同じ症状の人に勇気を」 全身脱毛症の34歳農家(氷川町) SNSに「格好いい」ポートレート

熊本日日新聞 | 2020年10月28日 12:00

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写真家に撮影してもらい、自身のSNSに掲載している宮崎修太さんのポートレート

 熊本県氷川町の農家、宮崎修太さん(34)は、全身の体毛が徐々に抜ける全身脱毛症を3年前から患っている。一時は人前に出るのが嫌になったというが、今年夏から自らのポートレートをSNSに掲載。格好いい姿の写真を見てもらうことで、「同じ症状の人に勇気を」との思いからだ。

 宮崎さんが症状に気付いたのは、頭部の円形脱毛から。半年ほどで改善したが、2018年の夏前に再発。「すごい勢いで髪が抜け始め、部屋が抜け毛だらけになった。ショックだった」と振り返る。髪以外にも、眉毛やひげなど全身の体毛が抜けていった。

 病院に通ったが、根本的な治療法はなかった。はり治療や東洋医学にも頼ったが、目立った改善は見られず、症状を隠したくてニットキャップが欠かせなくなった。

 農業後継者でつくる4Hクラブの九州ブロック会長を務めたことがあるなど、地域の若手農家のリーダー的存在の宮崎さん。仕事そのものに支障はないが、発症後は人に会うのが怖くなっていったという。「恥ずかしかったし、大病にかかったのではと心配されたくなかった」

 行動が、どんどん消極的になっていた。それでも次第に、そんな自分自身にもやもやした気持ちを抱き始めた。「このまま自分をごまかし続けていいのか」。自問自答を繰り返し、「格好いい姿を見てもらえれば多くの人に病気への関心を持ってもらえるのでは」との心境に至った。

 インスタグラムでファンになった写真家に撮影依頼のメッセージを送ったところ、思いをくみ取ってもらえた。今年8月に熊本市内で撮影し、ファッションフォト風の作品約20枚が完成。9月から自身のフェイスブックなどで次々に公開している。

 掲載を始めると、知人から「実は家族も同じ思いを抱えている」とのメッセージも届いた。宮崎さんは「命にかかわる病気ではないが、外見が変わるだけに精神的なダメージは大きい。こんな病気があるのだと知ってもらうことで、人前で隠さなくてもいい社会に少しでもつながれば」と期待している。(内田秀夫)