ごみの中の宝飾品「質屋で換金」 処分場作業員ら 実質損害なく、熊本市は対応苦慮

熊本日日新聞 | 2020年10月9日 11:30

image
埋め立てごみの中からネックレスとみられるものを取り出す作業員(読者提供)

 熊本市の一般廃棄物最終処分場で、市の委託業者の一部作業員が、埋め立てごみの中から宝飾品などを私的に持ち出し、換金するなどしていたことが8日、分かった。委託業者は「市の信頼を裏切る行為」として従業員2人を懲戒処分にした。ただ宝飾品は市の再資源化の対象となっていない“ごみ”のため、市は実質的な損害が認定できず、対応に苦慮している。

 9月上旬、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に複数の“証拠写真”が送られてきた。ポリ袋や家電、傘などが散乱する処分場で、作業員がネックレスのようなものを拾い上げている様子が写っていた。撮影日は8月上旬という。

 委託業者を取材すると、8月に同様の情報提供を受け、すでに社内調査を実施。男性2人が事実を認めたため、9月1日付で2人を降格や減給の懲戒処分としたという。

 同社によると、うち1人は「ネックレスや指輪などを質店に複数回持ち込み、計7万~8万円程度を得た」と説明。ほかに2人とも「自分で使うため」としてバッグやオイルライターなどを持ち帰ったと明かした。

 2人は「4月ごろから持ち出しを始めた」と話しているという。新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続く中、断捨離[だんしゃり]ブームも重なり、ごみ量が急増。「まだ使えそうな物が以前に比べて目に付くようになり、埋めるごみだから(持ち帰っても問題ない)という認識だったようだ」と同社。

 同社は調査結果を市に報告し、2人が持ち出した物品を返還。売却益の扱いについても市と協議中だ。同社幹部は熊日の取材に「監督責任を痛感している」と話した。

 一方、委託業者から報告を受けた市は、「社会通念上の問題はあるとしても、法的な問題が不明確で、何らかの行政処分をするかどうかも含めて方針がまだ固まっていない」(市環境施設課)と歯切れが悪い。

 というのも、市が収集し、市有地で管理する搬入物は「市の所有物」だが、市が最終処分場で選別して売却しているのはアルミなど再資源化できる金属のみ。2019年度は915トンを回収し、約78万円の財源を得ている。

 これに対し、ネックレスなどは再資源化の対象外。実質的な市の損害は生じておらず、「業務上横領や窃盗罪にも該当しない可能性が高い」(同)という見解だ。

 同市は10月1日から、古紙類や缶など資源ごみの「ごみステーション」からの持ち出し規制を強化する改正条例を施行したばかり。ただ、業者の買い取り禁止や違反者の公表を盛り込んだこの条例でも、「埋め立てごみ」は対象外だ。

 市は今回、「業務以外での搬入物の場外持ち出しを禁じた委託契約の内容に違反する可能性がある」との理由で、業者側への対応を検討している。(原大祐、堀江利雅)