熊本の応援力に才能開花 秋場所優勝の正代、偉業成し遂げ恩返し

熊本日日新聞 | 2020年9月28日 11:30

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大相撲秋場所で優勝した正代=2月18日、宇土市

 明治、大正、昭和、平成の時代を経て、ようやく歴史が動いた。大相撲秋場所千秋楽の27日、熊本県宇土市出身の関脇正代(28)が3敗で追う翔猿を下して13勝2敗で優勝。1909(明治42)年に優勝制度ができてから熊本県出身幕内力士の誰も成し遂げられなかった偉業をやってのけた。

 昭和の名大関とたたえられた牛深市=現天草市=出身の栃光(66年1月場所後引退。77年死去)も手が届かなかった賜杯。これまで全国では13府県で優勝力士がいなかったが、横綱に免許を与えた吉田司家や多くの関取を輩出するなど相撲どころの熊本が含まれていたことを知らなかった人も多かったはずだ。

 勝てば優勝が決まる翔猿との大一番。初顔合わせでやりづらさも感じていたという。「今までの相撲人生で一番緊張したかもしれない。よく体が反応してくれた」。土俵際まで詰められてもろ差しを許す苦しい展開となったが、突き落として逆転勝ち。今年に入って2度の優勝争いを経験したことで精神的に落ち着き、慌てなくなった。

 2016年の熊本地震では古里の宇土市や被害の大きかった西原村、益城町などを訪れ、被災者と交流して励ました。今年に入って新型コロナウイルスの影響で帰省することもかなわず、7月の熊本豪雨ではテレビに映し出される故郷の悲惨な状況に心を痛めるしかなかった。

 先場所の直前には「自分の相撲を取り切って地元の人が喜んでくれるなら、こんなにうれしいことはない」と語っていた正代。優勝後のインタビューでは「地元のたくさんの方の応援が力になった」。その恩にこれ以上ない形で報い、故郷を勇気づけるビッグなプレゼントを届けてくれた。

 県出身力士としては栃光以来58年ぶり7人目の大関昇進は確実な情勢となった。現在の幕内42人のうち、30歳代は18人に上る。11月に29歳になる正代だが、その覚醒ぶりを見ると、まだまだ伸びしろが期待できそうだ。

 正月には地元の少年相撲クラブを必ず訪れ、後輩たちと汗を流してきた。クラブの代表で正代を指導した宇土市相撲連盟の園田茂会長(60)は言う。「大きなけがもなくやってきた。これからが全盛期じゃないですか」(梅ケ谷昭人)

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