ペットの看取り、考える機会に 漫画家イシデ電さん「ポッケの旅支度」 愛猫の最期「一つのケースとして」

熊本日日新聞 | 2022年11月25日 12:07

自宅でくつろぐポッケ(左)=2012年ごろ(イシデ電さん提供)
9月に出版された「ポッケの旅支度」の表紙。漫画を描くイシデ電さんとおんぶをねだるポッケが描かれている

 「ご注意、猫が死にます」。注意書きから始まるツイッターのつぶやきとともに掲載された40枚の漫画。漫画家イシデ電さん(46)が、愛猫の看取[みと]りを描いた「ポッケの旅支度」だ。飼い主にとって避けられない「ペットの終末」だが、事前には想像しづらい。作品では、介護から看取り、火葬、その後までが赤裸々に描かれ、多くの飼い主がペットの“最期”を考えるきっかけとなった。

 漫画には約13万の「いいね」が付き、コメント欄には、多くのフォロワーからペットを看取ることへの覚悟の言葉などが並んだ。反響は大きく、9月には書籍化、発売から約1カ月で重版も決まった。

 物語は15歳のポッケが衰弱し、自力でトイレまで行けない場面から始まる。病院で体温計が反応しなくなり、イシデさんは「診ていただくのはこれで最後にします」と自宅での看取りを決意。作品では、ポッケの介護による自身の生活への影響や、痙攣[けいれん]するポッケを抱いて泣きながら声をかけたり、火葬をどうするか悩んだりしたことなどが、イシデさんの素直な心情とともに描かれる。

 イシデさんは2006年にポッケたちと暮らし始め、その様子を4コマ漫画で発信してきた。ポッケの闘病が始まると、4コマでは描ききれなくなり、短編の漫画として描くように。ペットの介護や看取りを、包み隠さず描くことは「当たり前のことだった」と振り返る。

 作品には以前、飼っていた猫「こぜ」が登場する。当時、イシデさんは「医療費を稼ぐことが介護」と思い込み、病気のこぜを病院に預けて別の仕事を続けた。ほとんど一緒に過ごせないまま、こぜはイシデさんが仕事中に病院で息を引き取る。この時の後悔からポッケの治療は最低限とし、「いつも通り、みんな一緒に」を心がけた。

 こぜとポッケの闘病や介護を経験したイシデさん。ペットの老後に直面する人たちに、「火葬について調べるくらいでいい。飼い主はペットとたくさん楽しい思い出をつくることが大事。その思い出が闘病時の原動力になる」と語る。

 ただ、家族同然に過ごしたペットが病に苦しむ様子に悩む人も多い。イシデさんは「介護では迷ったり、我を失ったりすることがある。どこまで治療するか、飼い主が決めなくてはいけない。いろんな人の体験談も聞いて参考にするのも…」と話し、看取りから弔い方までは、「飼い主とペットの関係はそれぞれなので、飼い主が考えて答えを出すのがいい」とした。

 イシデさんにとって介護で味わった大変さや悲しみは、「楽しい日々と同じくらい、かけがえのない体験だった」。愛猫との思い出が詰まった作品に、「多くの人に読まれてうれしい。『読んでおいて良かった』と言われるが、看取りのプロではないので、教本のようには扱わず、一つのケースとして読んでほしい」と話した。(中村悠)

 ◇いしで・でん 1976年生まれ。東京都在住。2005年に漫画家デビュー。主な著作に「私という猫」シリーズ、「猫恋人」など。ツイッターや投稿サイト「note」で猫たちとの生活を発信している。10月からは雑誌「BAILA」のウェブ版で新連載「おいしい二拠点」も始まった。

イシデ電さんが自宅での看取りを決めた場面(上の5コマ)と、痙攣するポッケに泣きながら声をかけるイシデ電さん(「ポッケの旅支度」から)

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