梅毒感染、熊本県内で過去最多更新中 全国でも1万人超 性風俗やSNS利用…不特定多数の性交渉が原因か

熊本日日新聞 | 2022年11月18日 20:30

梅毒患者の急増について、「SNSの発達などを背景にした不特定多数との性交渉の増加が一因ではないか」と話す水前寺皮フ科医院の井上雄二院長=熊本市中央区

 性感染症である梅毒の全国の感染者が、現在の調査方法となった1999年以降、年間を通じて初めて1万人を超えた。熊本県内でも13日までに170人の感染が報告され、過去最多を更新中。若者を中心に感染が広がるが、専門家は「性風俗産業や交流サイト(SNS)を利用した、不特定多数との性交渉の増加が一因ではないか」と指摘する。

 梅毒は2010年代半ばから増え始め、13日時点の全国の感染者は1万1018人(暫定値)。県内では17年以降、急増している。

 原因について、熊本皮膚科医会長で、水前寺皮フ科医院(熊本市中央区)の井上雄二院長(62)は「SNSの発達で、見知らぬ人同士が簡単に知り合えるようになったからではないか」と推測。「ソープランドなど以前からある性風俗では知識があり、検診などで自己防衛していた。最近はより気軽に利用できるデリバリーヘルス(派遣型風俗店)などが増え、店などで組織的に性病を管理できていないのでは」とみる。20年から、診察に来る人の中でのデリヘル利用者の割合が増えているという。

 梅毒は「梅毒トレポネーマ」という病原菌が、性行為などの際に性器や肛門、口の接触によって感染。初期は無症状で、症状が出るのに3週間、血液検査で陽性が検出できるようになるまでに6週間かかる。このため、症状がない期間に他人にうつす恐れがある。

 感染すると、病原菌が触れた性器に初期硬結(しこり)や潰瘍ができる。性器が痛かったり染みたりするが、1~2週間で症状がなくなる場合も。股の付け根のリンパ節が腫れたり、脱毛したりすることもあり、12週以降には「バラ疹」と呼ばれる紅斑が全身に現れる。井上院長は「バラ疹ができてから受診する患者が多いが、その間の性行為で人に感染させてしまっている。非常に厄介な病気」と注意を促す。放置すれば、皮膚や筋肉などに腫瘍ができ、臓器障害が出て死亡することもある。

 梅毒は早期に治療すれば治る病気だ。治療ではペニシリンを4~8週間、1日3回内服する。今年からペニシリンの注射が保険適応となったが、アナフィラキシーの報告も寄せられている。妊婦が感染した場合、胎盤を通じて胎児が感染することがあるほか、死産や早産、臓器の形成不全、難聴などの危険性をはらむ。

 「梅毒はHIV(エイズウイルス)と一緒に感染するケースが多く、次に急増するのはエイズ(後天性免疫不全症候群)ではないか」と危ぶむ井上院長。20代の感染者が多いことから、「エイズは完治せず、発症の予防に一生涯薬を飲み続けなければならない病気。性感染症の怖さについて、学校でも教えてほしい」と危機感を募らせる。(豊田宏美)

梅毒感染後、12週以降に手のひらに現れた赤い発疹(水前寺皮フ科医院提供)

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