あの〝フクアリ〟で勝った 「感謝」の地で感じた熊本サポーターの熱気 6年前、地震からの再スタートで敗戦<WEBコラム「赤馬のキセキ」>
あの〝フクアリ〟での勝利は格別だった。9月25日に千葉市のフクダ電子アリーナで行われたサッカーJ2ロアッソ熊本-千葉。赤馬戦士たちは、元J1の千葉を押し込み1-0で完封勝ちした。
熊本にとってフクアリは2016年の熊本地震から1カ月後の5月15日、リーグ戦再スタートを切った特別な場所だ。「思い一つも勝利遠く」。0-2で敗れた、あの試合結果を伝える朝刊には見出しとともに、歯を食いしばって走る選手たちの顔が並んでいた。
これまで、フクアリでの対戦成績は1勝2分け6敗と圧倒的に負け越していた。サッカー専用スタジアムと熱心な千葉サポーターの熱気がつくりだす圧力に押されるような試合を、以前は繰り返していた。今回、熊本を出発する前、熊本地震の時にロアッソ担当だった上司から、「千葉のホームではやられている印象しかない。でも今のロアッソならやってくれるはず。フクアリの雰囲気は最高だから楽しんでこい」とハッパをかけられた。
試合当日の朝、熊本空港で千葉戦を観戦に行く会社の同僚にたまたま会い、一緒にスタジアムに向かった。その同僚は16年には東京支社勤務。あの千葉戦を応援取材していた。熊本のサポーターはもちろん、千葉サポーターからもロアッソを応援する声を聞き、柄にもなく号泣したらしい。「スポーツの力ってあるんだってつくづく感じた」と教えてくれた。
記者自身は当時社会部。益城町などで地震被害の取材に奔走していた。あの試合当日の会場の雰囲気は知らなかったが、居合わせて取材した先輩たちの言葉を聞き、千葉への感謝の思いが高まった。
いざフクアリに着くと、熊本サポーターの熱気に目を奪われた。関東圏を中心に詰めかけた500人以上が2階席までアウェー側ゴール裏を埋めていた。声出し応援対象試合でもあり開始前からタオルを振り回し、ジャンプし、声を振り絞っていた。
リーグ戦最終盤でプレーオフ争いを繰り広げるチームを取材できる幸せ。4位の立場で、このフクアリに来られたこと。熊本サポーターの懸命な姿。感情が高まり、試合前にもかかわらず涙がにじんだ。
後半、決勝点を決めたのは在籍10季目のベテランDF黒木晃平。16年のあの試合にはメンバー入りしなかったが、熊本地震、その後のJ3への降格、そして復活を共に乗り越えてきた。終盤には大柄な選手を次々に投入する千葉のパワープレーに苦しい時間帯もあった。だが、ホーム千葉の応援にも勝る大きな声を出し続けた熊本サポーターの力が、選手の〝もう一歩〟を後押しした。試合後にゴール裏で記念撮影に納まるサポーターとイレブンの弾ける笑顔がまぶしかった。
残り4試合。J1参入プレーオフ進出へカウントダウンは始まっている。今季は、右肩上がりのチーム成績と裏腹にホームの観客動員数が伸び悩んでいるが、次戦(10月2日午後1時~)はえがお健康スタジアムで15位秋田を迎え撃つ。ホームゲームは残り3試合。願わくば多くの観客に足を運んでもらい、最高の雰囲気で選手を後押ししたい。(後藤幸樹)
◇ ◇
ロアッソ担当記者が試合で感じた思いなどを不定期で、熊日電子版限定で記します。題して「赤馬のキセキ」-。
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
ロアッソ熊本-
DF長嶋(兵庫・相生学院高)の加入内定 ロアッソ熊本 サッカーJ2
熊本日日新聞 -
ロアッソ熊本 黒木選手、竹本選手が来季へ抱負 熊日で今季終了報告
熊本日日新聞 -
DF黒木と契約更新 ロアッソ熊本
熊本日日新聞 -
ロアッソデザインのマンホールを設置 熊本市上下水道局、えがお健康スタジアム横の歩道に
熊本日日新聞 -
苦戦も若手に光明 今季の評価、強化担当・織田秀和GMに聞く【ロアッソ特集】
熊本日日新聞 -
「赤の情熱」を〝ちから〟に新章へ 選手時代含め在籍13年、藤本主税ヘッドコーチ退団 「監督になって日本一に」【ロアッソ特集】
熊本日日新聞 -
【連載・ロアッソ熱闘の軌跡④】観客数12位、平均下回る予算 交通アクセス、動員の足かせに
熊本日日新聞 -
【連載・ロアッソ熱闘の軌跡③】攻撃はリーグ屈指でも…総失点リーグワースト2位 今季データを分析 勝率、総得点は昨季超え 陣形修正が浮上直結
熊本日日新聞 -
ロアッソ上村主将「来季はたくさん勝つ」 大木監督ら県庁を訪問
熊本日日新聞 -
ロアッソ熊本「来季はJ1昇格を」 熊本市でシーズン報告会
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「家計管理」。11月25日(月)に更新予定です。