あの〝フクアリ〟で勝った 「感謝」の地で感じた熊本サポーターの熱気 6年前、地震からの再スタートで敗戦<WEBコラム「赤馬のキセキ」>
![アウェーの千葉戦に1-0で勝利し、サポーターと記念写真に納まるロアッソ熊本の選手たち=9月25日、千葉市のフクダ電子アリーナ](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2022-09/IP220927CTS000005000_02.jpg?itok=4k-loRY0)
あの〝フクアリ〟での勝利は格別だった。9月25日に千葉市のフクダ電子アリーナで行われたサッカーJ2ロアッソ熊本-千葉。赤馬戦士たちは、元J1の千葉を押し込み1-0で完封勝ちした。
熊本にとってフクアリは2016年の熊本地震から1カ月後の5月15日、リーグ戦再スタートを切った特別な場所だ。「思い一つも勝利遠く」。0-2で敗れた、あの試合結果を伝える朝刊には見出しとともに、歯を食いしばって走る選手たちの顔が並んでいた。
これまで、フクアリでの対戦成績は1勝2分け6敗と圧倒的に負け越していた。サッカー専用スタジアムと熱心な千葉サポーターの熱気がつくりだす圧力に押されるような試合を、以前は繰り返していた。今回、熊本を出発する前、熊本地震の時にロアッソ担当だった上司から、「千葉のホームではやられている印象しかない。でも今のロアッソならやってくれるはず。フクアリの雰囲気は最高だから楽しんでこい」とハッパをかけられた。
試合当日の朝、熊本空港で千葉戦を観戦に行く会社の同僚にたまたま会い、一緒にスタジアムに向かった。その同僚は16年には東京支社勤務。あの千葉戦を応援取材していた。熊本のサポーターはもちろん、千葉サポーターからもロアッソを応援する声を聞き、柄にもなく号泣したらしい。「スポーツの力ってあるんだってつくづく感じた」と教えてくれた。
記者自身は当時社会部。益城町などで地震被害の取材に奔走していた。あの試合当日の会場の雰囲気は知らなかったが、居合わせて取材した先輩たちの言葉を聞き、千葉への感謝の思いが高まった。
いざフクアリに着くと、熊本サポーターの熱気に目を奪われた。関東圏を中心に詰めかけた500人以上が2階席までアウェー側ゴール裏を埋めていた。声出し応援対象試合でもあり開始前からタオルを振り回し、ジャンプし、声を振り絞っていた。
リーグ戦最終盤でプレーオフ争いを繰り広げるチームを取材できる幸せ。4位の立場で、このフクアリに来られたこと。熊本サポーターの懸命な姿。感情が高まり、試合前にもかかわらず涙がにじんだ。
後半、決勝点を決めたのは在籍10季目のベテランDF黒木晃平。16年のあの試合にはメンバー入りしなかったが、熊本地震、その後のJ3への降格、そして復活を共に乗り越えてきた。終盤には大柄な選手を次々に投入する千葉のパワープレーに苦しい時間帯もあった。だが、ホーム千葉の応援にも勝る大きな声を出し続けた熊本サポーターの力が、選手の〝もう一歩〟を後押しした。試合後にゴール裏で記念撮影に納まるサポーターとイレブンの弾ける笑顔がまぶしかった。
残り4試合。J1参入プレーオフ進出へカウントダウンは始まっている。今季は、右肩上がりのチーム成績と裏腹にホームの観客動員数が伸び悩んでいるが、次戦(10月2日午後1時~)はえがお健康スタジアムで15位秋田を迎え撃つ。ホームゲームは残り3試合。願わくば多くの観客に足を運んでもらい、最高の雰囲気で選手を後押ししたい。(後藤幸樹)
◇ ◇
ロアッソ担当記者が試合で感じた思いなどを不定期で、熊日電子版限定で記します。題して「赤馬のキセキ」-。
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