高速バス、精神障害のみ割引対象外なぜ? 共同運行のハードル 福祉制度、整備が「後発」

熊本日日新聞 | 2022年8月6日 09:30

九州産交バスと西日本鉄道が共同運行する熊本-福岡間の高速バス「ひのくに号」(左)。精神障害者割引は導入されていない=7月下旬、熊本市中央区

 「身体や知的障害だと高速バスの割引を受けられるのに、なぜ精神障害だけ対象外なのでしょうか」。精神障害のある熊本県菊池市の30代男性から「SNSこちら編集局」(S編)に疑問の声が届いた。路線バスの場合は3種類いずれの「障害者手帳」でも半額割引が受けられるが、高速バスでは対応に差が生じている。

 男性は月1回ほど福岡行きの高速バス「ひのくに号」を利用している。運転免許証は持っているが「ほぼ身分証代わり」。体調に波があるため長距離運転は不安で、公共交通に頼らざるを得ないという。

 高速バスや特急バスなど県外と結ぶ路線で精神障害者のみ割引がないのはなぜ? 理由を九州産交バス(熊本市)に尋ねると「共同運行会社との議論が進んでいないことが理由」と回答した。ひのくに号は西日本鉄道(福岡市)と共同運行するなど、自社のみで割引を決めることができないことがハードルと言う。

 鹿児島県の南国交通や、長崎県の長崎県営バスも精神障害のみ高速バスの割引対象外だ。両社とも高速バスは他社との共同運行。一方、西日本鉄道の西鉄バスは、自社やグループ会社で運行する高速バスの場合は通勤通学などに使われる近距離を中心に、精神障害者割引を適用している。

 全国精神保健福祉会連合会(東京)によると、実は身体や知的に比べ、精神障害の福祉制度は「後発」だという。障害者手帳の交付に関する法律などの整備は、身体障害が1950年、知的障害が73年。精神障害の場合はさらに20年以上たった後の95年だ。

 バスと同様、鉄道でも対応が分かれている。

 熊本県内では熊本電鉄や南阿蘇鉄道、くま川鉄道が障害の種類に関係なく半額割引を導入しているが、JR各社は精神障害者の割引を導入していない。日本弁護士連合会は7月7日付で、障害者全体を統一的に割引の対象とするよう求める意見書を、JR各社などに提出している。

 高速バスでも、対応に差があることの認識はあるものの、現在、新型コロナ禍の影響で高速バス事業は厳しい経営状況に陥っており、共同運行会社間での割引導入の議論は進んでいないという。九州産交バスの担当者は「利用者数が回復すれば議論が再開されると思う」とコメントした。

 S編にメッセージを寄せた男性は「コロナの影響もあるのかもしれないけれど早く同じ仕組みに変えてほしい」と訴えた。(立石真一)

 ◆熊本県内の障害者手帳保持者 熊本県障がい者支援課によると、てんかんや発達障害、統合失調症などがある人を対象とする「精神障害者保健福祉手帳」の交付は今年3月末時点で2万402人。「身体障害者手帳」は8万3637人、知的障害の「療育手帳」は2万1306人に交付している。

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