TSMC、菊陽町進出で「水」大丈夫? 1日1・2万トン採取 地下水の循環利用など対策

熊本日日新聞 | 2022年7月19日 07:30

TSMC新工場の建設現場。新工場は地下水保全に積極的に取り組む計画だ=1日、菊陽町

 世界的な半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社「JASM」による新工場建設が菊陽町で進んでいる。半導体の生産に大量の地下水を使うため、環境保全の仕組みに対する問い合わせが「SNSこちら編集局」(S編)にも寄せられている。JASMの取り組みや規制についてまとめた。

 JASMによると、1日に採取する地下水の量は約1万2千立方メートル。年換算では438万立方メートルで、熊本市と周辺の計11市町村で2020年度に採取された総量1億6505万立方メートルの2・7%に相当する。菊陽町を含む11市町村は、県地下水保全条例で地下水の水位が低下している「重点地域」に指定されている。

 重点地域では、くみ出し口の断面積が19平方センチを超えるポンプで地下水を採取するには知事の許可が必要だ。県環境立県推進課によると、現在は地下水採取に向けたJASMとの事前協議の段階。どのくらいの量をくみ上げることができるか把握するため、一部の井戸で試験中という。

 同条例は、地下水の採取量を抑制するための「使用合理化計画」と、地中の帯水層に水を蓄える「涵養[かんよう]計画」を提出することを求めており、事業者は毎年、実績を報告する必要がある。県は、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(菊陽町)を通して昨年12月、JASMに地下水保全への積極的な取り組みを要請した。

 これに対してJASMは、高度な水回収・リサイクルシステムを導入することで、採取した地下水の70%以上を循環利用すると説明。また、ソニーと同様に作付け前後の農地に水を張る湛水[たんすい]事業を実施し、採取量と同等以上を涵養するとしている。

 一方、工場内での排水処理に関しては、水質汚濁防止法の規制基準を守る必要がある。県は同法の「上乗せ条例」を定め、排水に含まれる重金属や有機溶剤などの有害な化学物質23項目について、同法よりも厳しい基準を設定している。

 また、有害物質を含む排水を出す工場は同法に基づき県への届け出が必要。県環境保全課によると、県は基準を満たしているかや漏えい防止策を取っているかなどを審査し、稼働後は必要に応じて立ち入り検査を実施する。

 JASMは、工場排水を下水道に流す計画。下水道法は有害な化学物質を処理した上で排出することを義務付けている。同法に基づき、工場のある菊陽町が立ち入り検査を実施し、水質汚濁防止法との二重の監視体制を取る。

 JASMの水利用や排水処理については一部で懸念の声があり、町議会や県議会でも取り上げられている。小原雅之・県環境生活部長は6月定例県議会で「県としては継続的な監視などで県民の不安を解消する」などと答弁した。

 国は6月、新工場の計画を認定し最大4760億円の補助金を出すことを決定。TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は「TSMCは環境に配慮した企業の代表的な存在でありたいと考えており、JASMもこの価値観を共有している」とコメントした。(田上一平)

 ■TSMCの新工場 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社「JASM」(熊本市)が、菊陽町の「第二原水工業団地」(約21・3ヘクタール)に建設する。TSMCにとって日本初の工場。投資額は約86億㌦(1兆円超)で、約1700人の雇用を見込む。日本で最も微細な回路線幅の演算用ロジック半導体の生産拠点となり、JASMに出資するソニーグループやデンソー向けに供給する。4月に着工しており、2024年の生産開始を目指す。

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