「朝課外」廃止方針に歓迎と困惑 熊本県立高 「主体的な学び重視を」「資格取得には必要」

熊本日日新聞 | 2022年6月17日 07:00

朝課外を受ける済々黌高の生徒たち。来年度から全学年で廃止する=13日午前7時40分過ぎ、熊本市中央区

 熊本県立高で長年続いてきた「朝課外」の廃止方針が、生徒や保護者、学校関係者の間に波紋を広げている。生徒の自主性を重んじる判断を歓迎する一方、「資格取得を目指す生徒には必要」と存続を望む保護者もいる。

 県教育委員会は昨年11月、朝課外の廃止の検討を各校に要請した。本年度導入された生徒の主体的な学びを重視する新学習指導要領と、教員や保護者の負担軽減が大きな理由だ。

 いち早く応じたのが玉名高(玉名市)。保護者と協議し、本年度から全学年で朝課外を取りやめた。

 玉名高は地域の代表的な進学校で、朝課外は少なくとも1980年代後半には実施されていたという。平日の午前7時20分から40分間の国語、数学、英語を中心にした問題演習。希望者が受講する制度だったが、大半の生徒が参加していた。

 ただ、通学に1時間以上かかる生徒もいて、以前から見直しを検討してきた。今回の廃止について目立った反対意見はなく、生徒も「朝の時間が自由に使える」「本来の授業に集中できる」などと好意的に受け止めているという。

 豆塚政彦教頭は「主体的な学びが求められる時代の流れに沿った。大学入試の変化に対応するためにも授業を充実させる」と説明。1人1台の学習用端末を使い、きめ細かに学習をサポートする考えだ。

 熊本市の第二高や熊本北高も本年度、1、2年で取りやめ、来年度に3年も廃止する方針。済々黌高も来年度から全学年での廃止を決めるなど、各校で見直しの検討が進んでいる。

 廃止の動きに、県公立高PTA連合会の夏木良博会長は「部活動や塾通いもあり、生徒の多くは夜型の生活にシフトしている。早朝に弁当を作る保護者の負担も考えると、個人的にはやめた方がいいと思う」と受け止める。

 一方、次男が農業系の高校に通う40代の母親は「子どもは測量士の資格取得を目指しているが、授業時間だけでは圧倒的に勉強が足りない」と困惑する。

 母親によると、朝課外の費用は年間5千円。専門の予備校に通うよりはるかに格安で「家計が厳しい中、先生たちの協力で助かっている。廃止ありきではなく、柔軟に考えてほしい」と訴える。夏木会長も「高校によって実情は違う。朝課外があってもいいという声も少なくない」と話す。

 県高校教職員組合の青木栄委員長によると、任意である朝課外の受講を教員が強いたり、正規の授業をしたりして過去に問題となった。「朝課外は行き過ぎた受験教育の典型。以前から疑問の声があったにもかかわらず、前例踏襲のまま続いてきた。どんな学習効果があったのか、何らかの検証が必要だ。廃止は教員の働き方改革の観点からも良いことだ」と指摘する。

 大分県教委は4年前に全廃した。懸念された学力低下について「進学実績が下がったというデータはない」という。
(臼杵大介)

 ■朝課外 教育課程に基づかない非正規の授業。数十年前、都市部と比べて塾や予備校が少ない地方の学力向上策として、PTAが主体となって九州の高校に広まった。受講は任意だが、生徒や保護者からは「事実上の強制となっている」と指摘されてきた。教員の人件費はPTAが負担することが多い。1時限目の前に始まるため、他県では「ゼロ時限」「朝学習」「早朝講座」とも呼ばれている。

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