耕作不適地で太陽光発電 山都町の国営土地改良事業 農家負担減へ転用計画

熊本日日新聞 | 2021年11月28日 11:29

国営矢部土地改良事業で整備された農地。斜面の段々畑には未利用のままススキや雑木に覆われた所もある=山都町

 熊本県山都町北部の阿蘇外輪で、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画が進んでいる。現地は、高原の荒れ地や山林を「国営矢部土地改良事業」で整備した農地。耕作に適さず、長年、未利用の状態が続いている場所もある。かつて、農家の規模拡大と所得向上を目指した“夢”の農地は、想定とは異なる道をたどろうとしている。

 「開墾された農地の一部は石が多く、トラクターが壊れることもあった。それでも何種類か作物を植えてみたが、風が強く、収穫はできなかった」。同事業で造成された農地を購入した70代の男性=同町=は、1988年度に事業が完了した当時を振り返る。

 ◆かさむ出費◆

 以来、農地は30年ほど未利用のままだが、管理などに伴う賦課金が発生。給水状況で異なるが、男性の場合、10アール当たり年間3800円を「矢部開パ地区土地改良区」に支払い、固定資産税も納めてきた。「所有していても出費するだけだった」と打ち明ける。

 山都町の合併前の矢部町史などによると、69年度に国の地域指定を受けて始まった事業は当初、約2400ヘクタールの農地を整備する構想だった。しかし農業の担い手不足などを理由に、5年後の着工段階では3分の1に縮小。その後さらに計画は縮小され、実際の事業面積は約500ヘクタール(道路や斜面含む)で、総事業費は約120億円だった。

 事業完了後、大半の農地では夏場の冷涼な気候を生かしてキャベツやトマトの栽培が順調で、町内の主要産地の一つに育った。一方で、耕作されないままの農地も約100ヘクタール(2020年)残った。

 ◆有効活用◆

 農家の負担が続く事態を打開しようと、かねて同土地改良区は未利用農地の有効活用を模索。しかし、国の事業で整備されたため優良農地に分類され、制度上、農業以外への転用は認められなかった。

 ところが、13年に「農山漁村再生可能エネルギー法」が成立。利用が難しい荒廃農地などは一定の条件で転用が可能になり、状況は大きく変化した。これを受けて、同土地改良区は19年ごろから太陽光発電所の検討を本格化。現在、益城町の山都太陽光発電所(西山昂二職務執行者)が、環境アセスメントの手続きを進めている。町農業委員会による農地転用の許可などを経て、着工する方向だ。

 同土地改良区の組合員は約300人で、発電所計画地の地権者は約100人。実現すれば、地権者に借地料が支払われ、同土地改良区の賦課金は不要になる。

 梅田穰町長は「未利用の農地は、町にとって長年の課題の一つだった。太陽光発電所が実現すれば、農家の負担が軽くなり、ありがたい。土砂流出など環境に配慮して工事を進めてほしい」と話している。(鹿本成人)

 ◆山都太陽光発電所の事業計画◆ 事業面積は116ヘクタールで、大半が「国営矢部土地改良事業」で造成された畑地。総出力9万キロワットの太陽光パネルを設置して、2025年3月の完成を目指している。

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