音楽を楽しんで生きる力に 教本「ピアノランド」30周年 作曲家・樹原涼子(熊本市出身)に聞く

熊本日日新聞 | 2021年11月26日 11:56

初歩から両手で弾くメロディーに、伴奏と歌を付けた「ピアノランド」

 全国のピアノ学習者に親しまれている教本「ピアノランド」シリーズ(音楽之友社)が刊行開始から30周年を迎えた。子どもが楽しみながら主体的に学ぶことを重視したこの教本は、日本のピアノ教育に変革をもたらしたと言われる。著者で作曲家の樹原涼子(熊本市出身)に、ピアノランドに込めた思いを話してもらった。(聞き手・三國隆昌)

 ◇きはら・りょうこ 熊本市生まれ。武蔵野音楽大器楽学科ピアノ専攻卒業。4歳でピアノを始め、八戸澄江、有馬俊一らに師事。ピアノ曲のほかCM、ゲームの音楽も手掛ける。コンサートやセミナーを通して次世代のための教育に力を入れる。「ピアノランド」の刊行開始から30周年を迎えた作曲家、樹原涼子(C)Tomoko Hidaki

 -ピアノランドシリーズは累計190万部のベストセラーだそうですね。

 「楽譜を扱うお店で置いていないところはほとんどないそうです。研究熱心な先生たちに選ばれ、コンクールの課題曲にも使われています。子どもの頃にピアノランドを弾いたという人たちが、ショパン国際ピアノ・コンクールにもどんどん出ています」

 -刊行の意図は。

 「昭和のピアノ教育で主流だったのは『言われた通りにやっていれば、いつか弾けるようになる』といった考え。私は音楽を楽しみ、生きる力にしてもらうために最高の方法を提供しようと、連弾と歌を取り入れ全曲書き下ろしで作りました」

 「直接のきっかけになったのは、『ここでだめならピアノをやめさせる』とお母さんに連れられて来た女の子との出会い。楽譜も読めず汚い音で弾くのが痛ましく、ピアノを好きにさせたい一心で作ったのがピアノランドの最初の曲です」

 -弾いて楽しいだけでなく、教え方も大事にしていますね。

 「ただ音符を見て丸覚えで弾くのではなく、音楽の仕組みを知る面白さを伝えたい。そのために、聴く力や知識を身につけてからピアノを弾き始める『二段階導入法』と、それに生徒自身が気付くようアドバイスしながら進める『カウンセリングレッスン』の手法を考案しました。それらを通じて自分の意見を持ち、音楽との関係をつくれるようになるのです」

 -教える側にとってハードルの高い内容もあるのでは。

 「子どものためと思えばできるようになりますよ。そうしないと次世代のピアニストや作曲家は現れてきません。今回のショパンコンクールで、音大ではなく東大出身の角野隼斗さんがセミファイナリストとなり注目を集めましたが、自分の考えを持って表現する人が評価されています」

 -音楽との関わり方こそが大事だという考えには共感します。

 「生きることと音楽が密接につながっていないと、上手に弾こうとするだけでは逆にストレスになってしまいます。音楽で挫折する子ではなく幸せになる子が増えていけば、本当にうれしいです」

音楽之友社・1980円

■理念と活用法 新著で解説

 「ピアノランド」シリーズ19タイトルを紹介する樹原涼子著「教える人も習う人も幸せになる ピアノランドメソッドのすべて」が出版された。二段階導入法やカウンセリングレッスンをはじめ、ピアノランドの理念と活用法を、優しい語り口で解説。「樹原涼子の考え方を知り、教材を使いこなすためのバイブルのような本。少しでもピアノを弾く人の役に、そして故郷熊本の役に立てたら」と著者は話す。

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