農業票「一枚岩」遠く 熊本県農政連、衆院選で対応苦慮 課題多様化、2区は分裂

熊本日日新聞 | 2021年10月26日 06:50

衆院選で推薦している自民党候補の選挙事務所を訪ね、農家への支援を求める県農業者政治連盟の宮本隆幸会長(左)=9日、熊本市

 31日の衆院選投開票に向け、熊本県内の農業政治団体が自民党公認候補の集票に動いている。ただ、会員農家数の減少で影響力低下は否めず、農業を巡る課題が多様化する中でかつての米価のように農家が一致結束するテーマも見当たらない。保守分裂となった熊本2区では会員の支持が割れ、難しい戦いを強いられている。

 「米価が下がれば地域農業を支える集落営農が打撃を受ける。耕作放棄を防ぐためにも、農家が安心できる支援策をお願いしたい」。衆院解散を控えた今月9日、JAグループ熊本の組合員や職員で組織する県農業者政治連盟(農政連)の宮本隆幸会長=JA熊本中央会長=は県選出の自民党国会議員の地元事務所を回り、米価下落への対策を強く求めた。

 農政連は昨年11月、熊本1~4区の自民現職(当時)4人の推薦を決定。今年8月には4人と、新型コロナウイルスの影響緩和策や災害に強い産地形成の対策強化など5項目の政策協定を交わした。

 自民党とは歴史的に、米価や農業関係補助金、貿易交渉などを巡って密接な関係を保ってきた。宮本会長は「熊本地震関係の農業予算もベテラン議員のチームワークで獲得できた。コロナ禍で先の見通せない今こそ、4人全員の再選が不可欠」と強調する。

 しかし、選挙戦での影響力は年々低下している。県農政連は地域農協ごとに11の総支部を持ち、会員数は7万3515戸(今年4月時点)。農家の高齢化や「農協離れ」を背景に、この10年で2万戸以上減った。加えて、営農形態の重心は稲作から畜産や施設園芸などに移動。ある農政連幹部は「かつての米価交渉のような、農家が『一枚岩』になれる共通項が見いだしづらい」と打ち明ける。

 そうした中、苦慮しているのが熊本2区への対応だ。17選を目指す自民前職の野田毅氏(80)と無所属新人の西野太亮氏(43)の保守系2人が2度目の対決。共産党新人の橋田芳昭氏(66)も割って入った。2区に関係する3総支部のうち2総支部(熊本市、荒尾・玉名)は会員の支持が野田氏と西野氏に分かれ、異例の「両者推薦」となった。

 県組織としては野田氏のみを推薦しながら、両陣営から「平等な対応」を求められる板挟みの状況。熊本市では総支部のトップが表立って動きづらいため、県組織の幹部らが管内のJA支店を巡回して野田氏支援を呼びかける苦渋の対応を取っている。

 農家の判断は分かれる。野田氏を支持する南区の男性(63)は「議員が予算を取れるようになるには当選を2~3期重ねんと。今はまだ実績が必要だ」。一方で、西野氏を応援する南区男性(73)は「地区の未来を担う若手農家たちも世代交代を期待している」と言う。「国政選挙はしがらみが多いので投票しない」(南区73歳男性)と距離を置く農家もいる。

 宮本会長は「選挙応援をするのはあくまで農業発展のため。組織が分裂したら元も子もない」。融和を意識しながらの選挙戦が続く。(中尾有希)

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