混在なぜ?「立田・龍田・竜田」 熊本市北区 専門家推察、先に読み方➡漢字が変化

熊本日日新聞 | 2021年10月10日 10:42

龍田小前の歩道橋にかかる横断幕は「龍田」だが、下の表記は「竜田町」となっている=熊本市北区

 白川沿いに住宅街が広がる熊本市北区龍田。近くに住む男性会社員(42)から「地区内に龍田、立田、竜田の3種類の漢字の『たつだ』が混在しているのが気になる」との声が、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に寄せられた。住所表記は龍田1~9丁目だが、地域のシンボルは立田山(標高152メートル)で、JR豊肥線の駅名は竜田口駅と、確かにややこしい。

 地区を巡ると、龍田小前の歩道橋には「熊本市竜田町」と橋桁に書かれているが、その真上にかかる黄色い横断幕は「交通安全の町 龍田」とある。中学校も住所通り「龍田」だが、近くには私立「立田幼稚園」。一方で「竜田郵便局」と「上立田簡易郵便局」とに表記が分かれ、銀行やJAは「竜田支店」だ。1300年代創建の立田阿蘇三宮神社もある。

 熊本地名研究会の木崎康弘会長(64)は、三つの中で最も古いのは「立田」だろうと指摘。「菊池一族の中に立田姓を名乗る人物が現れ、平安時代末期には現在の龍田一帯を拠点としたとみられる」と話す。立田には800年以上の歴史があるようだ。

 「龍田」が登場するのは、1889(明治22)年の市町村制からだ。上立田村など周辺3村が合併して龍田村が誕生。1957年には、龍田村が熊本市に編入された際に龍田町となり、旧上立田村は龍田町上立田となった。2000年には全て「龍田○丁目」で統一された。

 郷土誌「龍田-むかしと今-」(大平五雄編)には、「龍」の文字を用いた理由として、肥後細川家の菩提[ぼだい]寺であった泰勝寺の山号が「龍田山[りゅうでんさん]」であり、立田山を漢詩で龍田山と書くことから採用されたと記されている。

 一方、「竜」の字を使う竜田郵便局は、1938年の開局時の名称は「龍田郵便局」。その後、69年の移転時に「竜田郵便局」に改称したが、同郵便局に理由を聞いても分からなかった。竜は龍の新字であり、常用漢字として普及した可能性もある。

 地名に詳しい早稲田大社会科学部の笹原宏之教授(日本語学)は「地名は一般的に読み方が先に生まれ、後から漢字が当てられることが多い」と指摘。「立田に後で『龍』や『竜』を用いることで地名を飾ったのだろう」と推察した。混在する三つの漢字表記には、先人たちの地域への思いが詰まっているのは間違いなさそうだ。(岡本遼)

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