「症状変動、遅発性ある」 水俣病研究医師らがシンポジウム

熊本日日新聞 | 2020年8月31日 10:06

 「慢性メチル水銀中毒症シンポジウム」が30日、オンラインであり、被害者と向き合って水俣病研究を続ける医師3人が現状を報告した。全日本民主医療機関連合会などの研究会が初めて開き、107人が参加した。

 水俣病を巡る国賠訴訟で、国は症状の変動や遅発性水俣病などを認めていない。研究会は日本神経学会が昨年1月、国の主張を追認する見解を示したことを問題視し、現場の声を伝えようとシンポジウムを企画した。

 感覚障害のみの被害が認められた関西訴訟の原告らを診断してきた阪南中央病院(大阪府松原市)の三浦洋医師は「感覚障害は中枢神経の疾患で症状の変動は珍しくない」と学会の見解を批判。

 首都圏の熊本県出身者らを対象にした検診に加わった東葛病院付属診療所(千葉県流山市)の戸倉直実所長は「メチル水銀摂取から20年以上過ぎてからの発症や、受診して初めて症状を自覚した人も多い」と述べた。

 協立クリニック(水俣市)の高岡滋院長は「複数症状のある重症者以外を切り捨てる行政の認定基準が、水俣病を巡る医学をゆがめた」と指摘した。(堀江利雅)