網膜の難病、支援拡充を 眼鏡購入助成、自治体で差 患者団体「生活に必要不可欠」

熊本日日新聞 | 2021年09月23日 07:50

光学機器大手「HOYA」が開発した暗所視支援眼鏡=熊本市中央区

 東京パラリンピックで活躍した熊本県勢にも患者がいる「網膜色素変性症」。徐々に視力が低下し失明することもある難病だが、患者らの生活をサポートする「暗所視支援眼鏡」の購入助成が、本年度から熊本市などでも始まった。助成制度は天草市を皮切りに全国に広がりつつあるが、助成額に差があるという課題も。23日は「網膜の日」。県内の患者団体は「視覚障害者の生き方の選択肢を増やしたい」と支援拡充を訴えている。

 網膜色素変性症の患者は4千~8千人に1人といわれ、確実に進行を止める治療法はない。日本網膜色素変性症協会によると、網膜の病気は客観的に分かりにくく、周囲のサポートを受けにくい実情があるという。

 暗所視支援眼鏡は、光学機器大手HOYA(東京)が独自開発したもので、カメラで捉えた景色を明るい映像として眼鏡のディスプレーに投影する。映像の拡大、縮小もでき、広角レンズを使うことで視野も広げられる。

 同協会県支部会長の山本悟さん(60)=熊本市=は40歳で診断を受け、現在の矯正視力は左が0・3、右が0・1以下。山本さんは「眼鏡があれば学業や就労を諦めずに済む」と、厚生労働省や県内の自治体を訪れて症状や眼鏡の性能を説明し、購入助成が受けられる日常生活用具の給付対象に加えるよう要望してきた。眼鏡の価格が39万5千円と、個人で購入するには負担が大きいためだ。

 山本さんらの働き掛けを受け、天草市が2年前、全国で初めて日常生活用具の給付対象に指定。県支部によると、9月時点で全国55自治体、県内では8市町が対象に追加した。ただ、天草市、熊本市、八代市、益城町が患者負担を原則1割とする一方、菊池市、合志市、大津町、菊陽町は助成額が19万8千円までで、自己負担に差が生じている。

 菊池市や合志市は「ニーズがまだ不透明。ほかの自治体の動向を見て協議したい」。全国でも1割負担で済むのは半数にとどまっており、患者負担が大きい自治体では眼鏡を「拡大読書器」の一種と位置付けている所もあるという。山本さんは「眼鏡は生活するために必要不可欠なもので、読書器とは用途が異なる」と訴える。

 県支部の設立から2年半。東京パラリンピックでは、同じ病気の競泳男子の富田宇宙選手=熊本市出身=やゴールボール女子の浦田理恵選手=南関町出身=らが活躍し、山本さんは「網膜色素変性症という病気の認知度は高まりつつある。社会の理解が進んでほしい」と期待する。

 県支部の会員は10~70代の45人だが、県内に医療受給者証を持つ人は約450人いる。「悩みを抱え込む人はまだ多い」と山本さん。今後も自治体への要望や啓発を続け、視覚障害者が暮らしやすい社会の実現を目指す。(深川杏樹)

暗所視支援眼鏡を掛けて外出する山本悟さん

記事アクセスランキング

フォローする

  • facebook
  • twitter
  • LINE
  • youtube