ヤマビル増加、シカなど運搬か 住民ら苦慮 南阿蘇村外輪山麓

熊本日日新聞 | 2021年09月22日 19:33

南阿蘇村の東部で生息域を拡大しているヤマビル
草刈りを終えた住民の脚をはい上がるヤマビル=南阿蘇村

 熊本県南阿蘇村の南外輪山麓で人や動物の血液を吸うヤマビルの生息域が拡大し、地域住民が対応に苦慮している。近年、人里へ頻繁に出没するイノシシやシカと共に麓に降りているとみられ、村も駆除剤を試験的に散布するなど、拡大防止策を検討している。

 「おったおった。ズボンをはい上がってきとる」。8月下旬、同村久石の上二子石地区。約1時間かけて林道の草刈りを終えた約25人の住民がお互いの体を確認すると、脚にヤマビルが多数付着。いつの間にか顔に吸い付かれていた人もいた。最年長の小林了秀さん(85)は「ヒルは昔からいたが、近頃は特に多い。気が付いたら背中や足が血だらけなんてことも珍しくない」と話す。

 ヤマビルはミミズの仲間で体長2~3センチ、3本の縦線模様が特徴。吸血された際、痛みはほとんど感じないが、特殊な分泌液によって血液が固まりづらくなり、しばらく血が止まらなくなる。

 村農政課によると、村内でヤマビルが増えているのは主に村東部の久石から両併の間。近年、頭数を増やしているシカやイノシシなどが山から人里へ下る際、ヤマビルの“運搬役”になっているとみられる。山林だけでなく、民家の庭や水田にも姿を現すようになったという。

 被害の拡大を受けて、同課はリンゴ酸などヒルが嫌う成分を含む駆除剤の導入を検討。ヤマビルへの効果と、牧草や草木への影響を調べるため、今月上旬に両併地区の牧野で試験散布を始めた。10月にも2度目の試験散布を行い、重大な影響が確認されなければ来年度の予算化を目指す。

 草刈りをする地区に駆除剤を提供し、農道や林道などは人の手で散布。必要とする牧野などには無人ヘリで広域散布する計画だ。同課は「まずはこれ以上生息範囲を広げないようにしたい」と対応策を話す。

 長年、全国のヤマビルの生態について調査している一般財団法人環境文化創造研究所(東京)ヤマビル研究会の谷重和代表(75)は、駆除剤による「科学的防除」に加え、ヤマビルが増えにくい状態を保つ「環境的防除」の重要性を強調する。

 「シカやイノシシが人を警戒するよう、林道と獣道が交差する場所の草を重点的に刈っておくのが効果的。ヤマビルが好む落ち葉を撤去し、土を乾燥させておくことも拡大防止につながる」とアドバイスする。(上杉勇太)

ヤマビルを警戒しながら林道の草刈りをする上二子石地区の住民たち

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