川辺川ダム「流水型にゲート」 国交省提示、放流量を調節可能に

熊本日日新聞 | 2020年12月19日 09:38

 7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策に関し、国土交通省は18日、熊本県の蒲島郁夫知事が支流・川辺川への建設を要請した治水専用の流水型(穴あき)ダムについて、放流量が調節できるゲート付きとする案を県や流域12市町村でつくる流域治水協議会の第2回会合で提示した。流水型ダムは、現行の川辺川ダム(貯水容量1億600万トン)の規模を維持した場合の治水効果(試算)を示した。実現すれば国内最大となる。

 流水型ダムは、洪水時のみに水をため、平時はためない構造。本体下部の穴あき部分にゲートを取り付ければ下流への放流量を操作できる。一方、ダムの規模について同省は「建設場所を含めて検討中」と説明した。

 流水型ダム建設と合わせて県が実施を求めている環境影響評価(アセスメント)について、国交省は同協議会に「追加して必要となる環境調査や環境保全措置を検討する」と報告した。

 この日の会合では、ハード・ソフト両面の対策を総動員し、7月豪雨の最大流量(人吉地点で毎秒7900トン)に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。目標値は、人吉地点で7千トンとした国の「河川整備基本方針」(2007年策定)を上回った。

 国交省は、7月豪雨の流量に対し、新たな対策を実施した場合の水位低減効果の試算も公表した。人吉地点(7900トン)では流水型ダムで2600トン、既存の県営市房ダムで500トンをカット。さらに市房ダムに放流口を増設し、貯水容量を増やす改良で200トン、遊水地整備で300トンを削減し、4300トンまで減らせるとした。

 河道掘削や引き堤を加えると、人吉地区の水位は概ね堤防の高さを数十センチから2メートル下回るとした。ただ、中流域の八代市坂本町付近では堤防を最大1メートル越える地点もあった。

 国交省と県はこの日提案された治水対策メニューについて、河川工学など専門家から意見を聴く場を23日に設ける。来年の梅雨時期に備えて直ちに実施する「緊急治水対策」を年明けに公表した上で、流域全体で推進する「球磨川流域治水プロジェクト」を年度内にまとめる方針。(高宗亮輔)