黒川温泉の入湯手形作り「私が後継者」 南小国町の38歳地域おこし協力隊員

熊本日日新聞 | 2020年12月15日 17:30

河津良隆さん(右)からヒノキの加工技術を学ぶ當房こず枝さん=南小国町
黒川温泉で販売されている入湯手形。イラストは以前、スクリーン印刷や焼き印だったが現在はスタンプ

 熊本県南小国町の黒川温泉名物「入湯手形」。町在住の木工職人、河津良隆さん(66)が材料の木の伐採から製造まで、40年近く1人で手掛けてきた。その数305万枚(11月末現在)。現在は河津さんの後継者として、町地域おこし協力隊員の當房[とうぼう]こず枝さん(38)が技術修得に励んでいる。

 黒川温泉の入湯手形は1986年、同温泉観光旅館協同組合が1枚千円(現在1300円)で販売を開始。購入すると、旅館15軒(現在28軒)のうち3軒まで露天風呂を利用できる画期的なアイデアが注目を集めた。人気商品となり、黒川温泉を全国的な観光地に押し上げる原動力の一つとなった。

 手形は直径9~12センチで、現在の材料は地元産のヒノキの間伐材。河津さんが皮を剥いで約3カ月乾燥させ、輪切りにして表面と側面を磨くまでを一手に担っている。黒川温泉の老人会がイラストの判を押して完成させる。

 河津さんによると、ヒノキは割れやすく、専用の乾燥施設での湿度管理が必要。年間約8万枚を作るが「最初は試行錯誤の連続。木が全て割れたこともある」という。衰えはないが「作り手がいなくなる」との危機感から昨年、後継者探しを町に相談していた。

 熊本市出身の當房さんは、町のまちづくり公社「SMO南小国」主催の起業セミナーに参加した際に事情を知り、後継者に名乗りを上げた。「長野県で家具製造を学んだ経験を生かせると思った」という。今年4月に協力隊員となり、以降週1回、河津さんの木工所に通っている。

 當房さんは手形以外で、ヒノキを材料にした商品化を提案する。河津さんと手形に使えない材料をコースターや鍋敷きなどに加工し、9月から町の物産館で販売を開始。売れ行きは好調で、町のふるさと納税の返礼品にする計画もあるという。

 河津さんは「彼女はガッツがあり、覚えも早い。立派に引き継いでくれそう」と目を細める。

 當房さんは手形の製造技術の安定した継承のため、複数人で受け継ぐことも考えている。「間伐材を活用する手形作りは、環境保全にもつながる。黒川温泉の文化として、しっかりと受け継ぎたい」と意気込んでいる。(木村馨一)

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