5月5日付

05月05日 09:11

 風をはらみ伸びやかに泳ぐこいのぼりを見ると、コロナ禍で窮屈になった胸のうちが、解きほぐれる心地がする。鮮やかな武者絵の矢旗も青空に映えて、陽光の明るさがより際立つ▼「五月節句にこれをたてて貰[もら]うと実に嬉[うれ]しかった」と、民俗学者の宮本常一が幼少期を振り返っていたのが、片鎌槍[かたかまやり]を担いだ加藤清正の武者絵だった。宮本の故郷は山口県の周防大島。熊本に限らず、子どもの守り神としての清正公信仰は、広く行き渡っていたようだ▼武者絵で分かる通り、「端午の節句」はもともと武家が男子の成育を祝う行事である。庶民にまで浸透しだしたのは幕末期かららしい▼それが児童福祉週間などに合わせ、「こどもの日」という国民の祝日となったのは、1948年。制定時は3月3日の「桃の節句」との折衷案で5月3日という意見も出たが、結局「男だけに限る祝日でない」と強調して、5月5日に落ち着いたという▼こいのぼりの製造販売を手掛ける八代市鏡町の「平本染工場」に尋ねると、近年は女の子向けに、ピンクやオレンジなど、「やわらかな色」の注文も多いそうだ。ただ、矢旗の方は「申し訳ないのですが、昔ながらの図柄しかなくて…」との答えが返ってきたが、どうだろう▼コロナ禍の今、「たくましく」との願いを託すには、ウイルスも逃げ出すような勇ましい武者絵が、むしろ性別を問わず好まれるかも。矢旗の清正公さんを従えて立つ女児の姿を想像すると、かえって現代的で、「むしゃんよか」ように思う。

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