4月11日付

04月11日 09:04

 12メートルというと、ビルの3、4階ほどの高さだろうか。直径も同じくらいある。東京電力福島第1原発で汚染水を浄化した後の処理水を保管するタンクだ。2年半前、現地を視察する機会があり、その巨大さに圧倒された▼しかもそれが一つではなく見渡す限り並んでいる。タンクを設置する場所がなくなり、原発の敷地内で処理水を保管するには限界がくる。実物を目にして、改めてそのことを実感した▼どういう処分方法になるか注目していたが、政府はとうとう海洋放出の方針を固めた。処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が国の基準値以下になるよう海水で薄めて、海に放出するという▼「どうしても海に流したいのなら、東電で出た処理水だから福島ではなく東京湾に流すのが筋だ」。原発事故後の風評被害に苦しんできた地元の漁業関係者からは、こんな強い反発の声も出ている。海洋放出によって、今までの苦労が水の泡になりかねないからだ▼処理水の処分は避けて通れない問題だが、果たして菅義偉首相には、海洋放出に納得してもらえる成算はあるのか。「専門家の意見を聞いて決めた」などと、自分の言葉で語り掛けることがなければ胸に響くこともないだろう▼福島県沖は暖流と寒流がぶつかり、潮目の海と呼ばれる豊かな漁場だ。脂が乗り身が引き締まった魚は「常磐[じょうばん]もの」として高い評価を受けてきた。首相の話に耳を傾けているのは、漁業関係者だけではない。「常磐もの」を口にするのを楽しみにしている消費者もだ。

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