障害者、LGBT…マイノリティー主役のコメディー映画、13日まで熊本市で上映 俳優・東ちづるさん企画「モヤモヤを持ち帰って」

熊本日日新聞 2025年2月9日 20:12
マイノリティーのパフォーマーたちが活躍する映画「まぜこぜ一座殺人事件」を通じて、「さまざまな個性を認め合える社会にしたい」と話す東ちづるさん=8日、熊本市中央区のユナイテッド・シネマ熊本(石本智)
マイノリティーのパフォーマーたちが活躍する映画「まぜこぜ一座殺人事件」を通じて、「さまざまな個性を認め合える社会にしたい」と話す東ちづるさん=8日、熊本市中央区のユナイテッド・シネマ熊本(石本智)

 障害者やLGBTなど性的少数者でつくる実在のプロパフォーマー集団を題材にしたコメディー映画「まぜこぜ一座殺人事件 まつりのあとのあとのまつり」が13日まで、熊本市中央区のユナイテッド・シネマ熊本で上映されている。映画を企画した俳優の東ちづるさんに、映画化の狙いなどについて聞いた。(山本遼)

 -たくさんのマイノリティーのパフォーマーが出演しています。

 「今年で芸能界40年目だけど、マイノリティーのプロのパフォーマーたちが存在することを長きにわたって知らなかった。あまりにすばらしいスキルを持っているのに、普段からテレビに出られないのはなぜ?と引っかかり始めて。(出演者だけでなく)スタッフにもいない。マスメディアは多様性やSDGs(持続可能な開発目標)をテーマに取り上げるけど、何か違和感というか、本末転倒に思えてきた」

 -マスメディアは変わってきましたか。

 「まぜこぜ一座を2017年に立ち上げて、公演のたびにものすごい数の記者の方が来た。テレビのディレクターもカメラマンも感激して、興奮しながら出演者のインタビューを撮ってくれる。けれども、翌日に1秒も放送されないということが繰り返されてきた。なぜ放送できなかったか理由を尋ねると、広告代理店は『クライアントさんが…』、企業は『視聴者の皆さんが…』と言う。〝ナゾ〟のままなので、それなら表現が自由な映画にしようと考えた」

 -そのエピソードは劇中にも描かれていました。

 「ほかにも、ダウン症の子がメークしてもらえないとか、作品に出てくるエピソードは全て実際にあったこと。稽古中とかご飯を食べに行った時に聞いた彼らの生の声を、以前から伝えたいと思っていた」

マイノリティーのパフォーマーたちが活躍する映画「まぜこぜ一座殺人事件」を通じて、「さまざまな個性を認め合える社会にしたい」と話す東ちづるさん=8日、熊本市中央区のユナイテッド・シネマ熊本(石本智)
マイノリティーのパフォーマーたちが活躍する映画「まぜこぜ一座殺人事件」を通じて、「さまざまな個性を認め合える社会にしたい」と話す東ちづるさん=8日、熊本市中央区のユナイテッド・シネマ熊本(石本智)

 -本物のエピソードを入れつつも、作品はコミカルなフィクションです。

 「ストレートに伝えたらどうしても説教臭くなる。私は舞台にしても映像にしても、全てにおいて笑いを取ることをすごく大切にしてきた。作品を見る中で発見があり、気付きがあり、そして感動もあるけれど、答えは私たちが与えるのではなく、皆さん自身が考えてほしい。モヤモヤしたものを持ち帰って、家族や同僚、友達と話して言語化してくださいね」

 -メディア以外の環境の変化はどう感じていますか。

 「確実に変わってきた。アップデートぶりはすごい。例えば、以前は『安全が担保できないから車いすの方はご遠慮ください』みたいなことが平気であった。それが差別だと思っていなくて、悪気がないまま排除していたサービス業なども変わってきている。難病に関しても先人たちが活動してくれたおかげで制度が変わってきた」

 -製作費などの工面も大変だったと思います。

 「映画化に当たっては製作費を必死で集めた。クラウドファンディングも使ったし、協賛企業にもお世話になった。今回の映画は全く利益を求めてないんですが、それでもSNS(交流サイト)で苦情を言ってくる人がいました」

 -苦情は多かったんですか。

 「いっぱいありました。じゃあ、パラリンピックも非難しろと言いたい。X(旧ツイッター)で『障害者を食い物にしてるんですか』って言ってきた人には、『まだ食い物にできていません。したいものです』って返した。私だって商品だから、東ちづるを事務所が食い物にしてるし、『食い物にしてね』って思っている。テレビ局も制作会社もそうでしょ。子役だって子どもを食い物にしていると言われれば、そうですよね。それを、障害者にだけ言うのはおかしい。本人がやりたいんだからいいじゃない。この人たちは出たい人たちなんだもの」

 -活動への支援が広がれば理想的ですが…。

 「一座の公演に企業のスポンサーが付いたら最高。こういうことをチャリティーとか施しにしてほしくない。利益が生まれて、ビジネスにしてほしい。プロの集団なので、ちゃんと稼いでほしい。こんなこと言っちゃうと『障害者で儲[もう]けるのか』と言われるけれど、『障害者で儲けて』って思ってます。それで彼らが潤ったらいい」

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