「障害とは」健常者と考える 車いす生活の原田さん(菊陽町)が研修会 「社会に無意識の壁ある」
脳出血による記憶障害があり、車いすで生活する菊陽町の原田隆寛さん(37)が2024年秋、NPO法人が認定する「障害平等研修」のファシリテーター(進行役)資格を取得した。「段差にスロープがあれば、そこに障害はなくなる。障害を生む原因は社会にこそある」。社会の中で無意識に存在する差別や障壁を、健常者とともに考える活動に踏み出す。
昨年11月28日、同町杉並木公園の会議室。原田さんと親交のある町民ら8人でのワークショップが始まった。初のファシリテーター役に、原田さんは「障害とは何か、皆さんで考えてみましょう」と、緊張気味に話し始めた。
ワークショップでは、障害者が多数を占める世界に健常者の男性が迷い込む、という架空の世界を描いた動画を視聴。男性はバスへの乗車やカフェへの入店を拒否され、理由も示さない。参加者は「なぜこんなことが起きるのか」と困惑した表情を見せる。
動画では、健常者への差別に周囲の障害者が気付かない、という状況が続く。次第に参加者は「無意識のうちに、私たちもこんなことをしているのかも」と気付き始めた。原田さんの中学時の担任だった長元尚子さん(65)は「当事者がその場で語ることに大きな意味があると感じた」。障害者が感じる壁に気付くためにも「意見交換し続けることが大事」と結論付けた。
原田さんは大学1年生の時、脳出血で倒れた。高次脳機能障害があり、短期記憶や突発的な事態に対応できないことがある。入院やリハビリを経て2年後に復学。講義には母直美さん(63)も参加し、ノートを取った。
12年前、原田さんは電車で乗車を拒否されたことがある。無人駅から車いすで乗ろうとすると、運転士から「(乗降に)時間がかかる。ここから乗らないで」と怒鳴られた。
「定時運行や安全面を考えると、あの対応も理解できる」。そう振り返る一方で「駅にエレベーターやスロープが整備されていれば、起きなかったこと」とも思う。障害の原因は障害者にあるのか、社会の仕組みにあるのか。「皆が考え、気付いてほしい」と願う。
昨年のワークショップを「皆さんが一つ行動すれば、一つ障害が無くなる。障害がどこにあるかを考え続けてほしい」と締めくくった原田さん。「全ての人が共生できる社会」の実現に向け、発信を続けるつもりだ。(草野太一)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
大津町議選、激戦必至に 無投票の前回から一転 議員報酬増額も一因か【アングル2025】
熊本日日新聞 -
大津町長選 無風一転、現新一騎打ちの公算 焦点はまちづくりへの評価 1月28日告示【アングル2025】
熊本日日新聞 -
好調ヴォルターズ、強敵信州とホーム戦 25、26日 バスケB2
熊本日日新聞 -
憧れのチームで挑むJ1昇格 MF飯星明良(背番号13)、精度高い左足武器に<ロアッソニューフェース>
熊本日日新聞 -
インフル患者減も警報レベル続く 熊本県感染症情報
熊本日日新聞 -
「供給網参入、人材育成へ支援を」 木村熊本知事と県内企業、武藤経産相に要望 車座会談
熊本日日新聞 -
タッチ決済導入、2月下旬に前倒し検討 熊本県内バス5社 一部路線は2月1日から
熊本日日新聞 -
大学3年も教員採用試験の受験可に 熊本市教委、今夏から 人材確保へ囲い込み
熊本日日新聞 -
九州・熊本の企業もCM差し替え フジテレビの対応を問題視 中居さんの女性トラブル
熊本日日新聞 -
「日本でのさらなる投資、検討を」 武藤経産相がTSMC副社長に要望 熊本工場を訪問
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。