紅葉の渓谷、丘に並ぶ巨石群… 爽やかな風感じ絶景堪能 マゼノミステリーロード・南小国町
大津町から阿蘇市のミルクロード(県道北外輪山大津線)を北へ。大観峰方面に右折せず、そのまま直進するとマゼノミステリーロード(南小国西部農免農道)に入る。謎めいた名前に、ワクワク感が高まってくる。なだらかに波打つ大地を快走。窓を開けると、高原の爽やかな風が気持ちいい。紅葉の季節に一般公開している「マゼノ渓谷」(南小国町中原[なかばる])の入り口が見えてきた。(森嘉男)
「うあ~、きれい」。マゼノ渓谷中心部の滝の下に降りた女性が大きな歓声を上げていた。渓谷の両岸はモミジやハゼ、クヌギなどの広葉樹が滝を囲むように枝を広げている。紅葉は始まったばかりで、葉先から赤や黄色に染まってきている。滝の音、遠くからの野鳥のさえずりが心地良い。マイナスイオンたっぷりの心から癒やされる空間だ。訪れた人たちは、滝をバックに盛んに写真を撮っていた。
マゼノ渓谷は筑後川の源流域に当たる。マゼノ(間瀬野)は、「交野」とも書く。交野は牛の放牧が盛んだった頃、隣接する阿蘇市からも放牧の牛が入ってきて、両地区の牛が交じっていたことから。
かつては南小国町所有の入会地だったが、間瀬野牧野共有組合に払い下げられた。普段は入れない原生林エリアだが、「素晴らしい景観を多くの人に見てもらいたい」と、紅葉シーズンとゴールデンウイークに限り公開している。今年は11月24日まで。
紅葉や新緑の美しさがSNSなどで評判になり、昨年は入場者が初めて1万人を超えた。入場者には、渓谷の雑木で作った木の領収書(長さ約8センチ、厚さ約1センチ)を手渡している。木には訪れた日付が刻印され、「かわいい」と好評だ。これ目当てに何度も来る人もいるという。鞭馬[むちま]公直・組合長(67)は「今年は紅葉が遅れ気味だが、人の手を加えていない自然そのままの渓谷を楽しんでほしい」。
マゼノ渓谷から約3キロ。不思議な巨石群がある「押戸石[おしといし]の丘」にも足を延ばした。駐車場から歩いて10分ほど。小高い丘の頂上(標高845メートル)に、巨石群が見えてきた。巨石は大小100個近くあり、頂上の尾根沿いに点在している。最大のものは高さ約5・5メートル、周囲約15メートル。
南小国町教育委員会が依頼した日本ペトログラフ協会の調査で、巨石の一部にペトログラフ(石刻文字)が刻まれていることが確認された。のどかな牛の放牧地が「太古の巨石文化遺跡」とされたことで、状況が一変する。全国からの見物人が後を絶たず、多くのごみが捨てられることが問題になった。そのため地区民が、NPO法人「押戸石の丘」(下城孔志郎理事長)をつくり管理。管理棟や遊歩道などを整備して、2011年から一般公開を始めた。
巨石群の不思議は、まだある。最大の石の頂点には北極星があり、方位磁石を近づけると方位が狂う現象が起きる。「はさみ石」という石には中央に隙間があり、その隙間から夏至に太陽が昇り、冬至に太陽が沈むという。高原を渡ってくる風を受けながら、意味ありげに並んでいる巨石群を眺めていると、何か神秘的な気持ちになってきた。
丘の頂上から見える360度パノラマの景観も見応えがある。9万年前の阿蘇火山の巨大カルデラ噴火でできた火砕流台地が延々と広がっている。はるか向こうに九重連山や涌蓋山[わいたさん]、祖母山も見える。
国内外から訪れる観光客は年間約3万人。下城理事長(64)は「巨石群を含む景観は毎年、野焼きをすることで成り立っている。今の景観を保ち、次の世代に引き継いでいきたい」と話している。
新名所「小萩山草原テラス」
阿蘇の原野や山々がパノラマで見渡せるウッドデッキ「小萩山草原テラス」が南小国町の新名所になっている。
設置場所は、同町満願寺の田の原温泉入り口から丘陵地を登った丘の頂上付近。町観光協会田の原支部が2022年、「絶景を多くの人に楽しんでほしい」と造った。デッキは約10メートル四方で、丘から突き出たような構造になっている。天気と見通しが良ければ、正面に阿蘇五岳の涅槃[ねはん]像がくっきり見える。黒川温泉や田の原温泉の温泉宿もよく分かる。近くには、縁結びの神様で知られる小萩山稲荷神社もある。
この日は、北九州市から訪れたオートバイのライダーたちが「すごい」「最高の景色」と言いながら、ずっと眺めていた。
◇マゼノ渓谷 環境整備費として1人300円(中学生以下は無料)を徴収。雨天の場合は閉鎖も。駐車場あり。
◇押戸石の丘 環境整備費として1人200円(中学生以下100円)を徴収。方位磁石は無料で貸し出している。駐車場あり。
◇小萩山草原テラス 田の原温泉入り口から「小萩山稲荷神社」の看板に従い、車で約15分。無料。駐車場あり。
※問い合わせは、いずれも南小国町観光協会☎0967(42)1444。
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