異色の経歴、歌手デビュー 熊本市でバー経営の不知火鈴香(50) 18歳で結婚、5人の孫…「目標は紅白」
異色の経歴を持つ演歌歌手がデビューした。熊本市在住の不知火鈴香。回り道はしたが、歌手になるという幼い頃から抱き続けてきた道を歩み始めた。7人の子どもと5人の孫を持つ50歳は「目標は、ずばり紅白出場」と意気込む。
物心ついた時には歌っていた。のど自慢やカラオケ大会の常連で、オーディションを経て、高校1年から東京の芸能事務所に入った。熊本と行き来しながらデビューを目指したが、妊娠を機に18歳で結婚。芸能界はいったん諦めた。
「子どもが手を離れたら、また歌えばいいやくらいに思っていました」。だが、修羅場が待っていた。生活のために子どもを預け、仕事を三つ掛け持ちしたことも。再び子どもと暮らすと、昼は会社に勤め、夜はスナックで働いた。2度の離婚も経験し、子どもは6人になっていた。
「その間も企業のイベントやパーティーに呼ばれて歌うなど、歌との縁は続いていた」。30代後半で夜の世界一本に絞った頃、銀座で歌わないかと誘われる。「教育費も必要だったし、出稼ぎにでも行くか」。平日は東京、週末は熊本で歌う生活を送った。
2年前からは熊本県内の道の駅でも歌い始めた。「お客さんから誘われたのがきっかけ。ちょうどコロナだったし、私の歌で皆が少しでも元気になれば、と思ってボランティアで始めました」。やがて、その歌声が芸能関係者の目に留まる。不知火の波瀾[はらん]万丈な半生に興味を持った作詞家の鮫島琉星が詞を書き、「良くない恋泣くよ」を4月にインディーズからリリース。9月25日には日本クラウンからメジャーデビューを果たした。
デビュー曲で、不知火はこれまでの歩みをあっけらかんと歌い上げる。上から読んでも下から読んでも同じ言葉を繰り返す「回文」のサビの部分が特徴的だ。10月2日付の有線リクエスト(演歌・歌謡曲)では1位を獲得。カップリングの「百花繚乱」は前向きな歌詞が自身の姿と重なるという。ロッカトレンチの大竹隼人が作曲したポップな歌謡曲に仕上がった。
「歌は体の一部。歌があったから今の自分がある」と振り返るが、心地良い歌声は聴き手に素直に届く。現在は熊本市内でカラオケバーを経営。一方で、若い頃に子どもを手放さざるを得なかった苦い経験から、子育て支援活動にも熱心に取り組む。夢は夜間学童保育施設を造ることだ。
デビューを記念して、9月から県内15カ所の道の駅を巡るツアーをスタート。十八番は松田聖子だが、「イベントでは、会場の客層を見ながら選曲しています」。軍歌からYOASOBIまでレパートリーは千曲を超える。12月5日には大黒摩季主催のチャリティーライブ(熊本城ホール)への出演が決まっている。(坂本尚志)
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