ゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」人気 連載10年210万部突破、テレビアニメも 菊陽町在住のかわさき健さん原作 父は「巨人の星」川崎のぼるさん

熊本日日新聞 2024年9月14日 22:30
連載10周年を迎えたゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」原作者のかわさき健さん=6日、合志市
連載10周年を迎えたゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」原作者のかわさき健さん=6日、合志市

 菊陽町在住の漫画原作家かわさき健さん(57)が手がけるゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」(作画・古沢優)が2014年の連載開始から10周年を迎えた。鹿児島・トカラ列島出身の天才ゴルフ少女が熊本の高校を経て、競技ゴルフの世界で飛躍していく物語。単行本は52巻まで刊行されており、シリーズ累計210万部を突破した。4月からテレビアニメ放映も始まるなど、ゴルフ愛好家の枠を超えて人気が広がっている。

 連載はゴルフ専門誌「週刊ゴルフダイジェスト」で14年8月にスタート。プロゴルファーを目指した経験があるかわさきさんだが、「依頼をもらう10年ほど前からゴルフ漫画の原作依頼が増えていた。でも、最初は『ゴルフ物しか書けない』と思われるのがすごく嫌だった」と明かす。自分の経験だけでなく、新たに勉強し広げた知見を作品に生かすようにしていたところ、「今回の連載依頼が来た」。

 作品は雑誌だけでなく漫画アプリでも配信。アニメは熊本県内でも7月からTKUで放送が始まった。「一般の漫画誌に載っていない小さな作品に目を付けてもらえるなんて、最初はアニメ化が信じられなかった」と振り返る。

 連載10周年に合わせて、合志市の合志マンガミュージアムでは「オーイ!とんぼ展」(26日まで)を開催中。漫画の原画や掲載誌を中心に、かわさきさんの原作と、古沢さんがコマ割りなどを描いたネーム原稿や完成原稿を並べたほか、主人公の大井とんぼが作中で使うクラブの実物も展示している。(山本遼)

 ◇かわさき・けん 1967年東京都生まれ。プロゴルファーを目指したが、26歳で断念し漫画原作家に。94年に商業誌デビュー。作品に「かさねの道」(画・今谷鉄柱)、「カラッと日曜」(画・古沢優)など。父は漫画家の川崎のぼるさん。

「オーイ!とんぼ」1巻の表紙(ⓒかわさき健・古沢優/ゴルフダイジェスト社)
「オーイ!とんぼ」1巻の表紙(ⓒかわさき健・古沢優/ゴルフダイジェスト社)

 ◆「1話1話、面白いものを」 かわさき健さん一問一答

 ゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」の原作を手がけるかわさき健さんに、着想のきっかけや作品に込めた思いを聞いた。(山本遼)

 -プロゴルファーを目指していたそうですね。

 「高校からゴルフを始めて、3年生の時に全英オープンでセベ・バレステロスが優勝したのを見たのがきっかけで、プロを目指してゴルフ場に研修生として入った。5回受けたプロテストは全部落ちた。漫画原作を始めたのはそれから」

 -今回の作品の舞台はどう決めたんですか。

 「当初は島民手作りのゴルフ場がある長崎の五島列島を考えていたが、出版社側から『もっと田舎の離島がいい。トカラ列島がいいんじゃないか』と提案された。現地へ行ったら『ここにゴルフ場を造ったら、良いものを書ける』という場所に出合い、一気にイメージが広がった。本当に何もない島だけど、僕らが忘れてしまっているものが全てあるように思えた。そんな環境で育った主人公なら、一般の人と価値観が絶対に違うはず。その主人公がゴルフで世界に出て行く姿を描けば、面白いものが書けると思えた」

 -作品のこだわりを教えてください。

 「父(漫画家の川崎のぼるさん)から、『漫画は1話1話が勝負で、その積み重ねが何年もの連載になる。先にどれだけ良い構想があっても、次の1話が良くなければ飽きられる』と教わった。1話1話、面白いものを書くことに力を入れている。登場人物それぞれのバックボーンを丁寧に書くことも心がけた」

 -主人公を指導する元プロゴルファーの五十嵐一賀(通称イガイガ)が、舞台回しに不可欠な存在になっています。

 「主人公はゴルフがうまいけど、ゴルフのことを何も知らない。だから、主人公のゴルフを説明する役がいないと読者に伝わらない。最初から計算したわけではないが、元プロというゴルフを見る目を持った人間がいた方が物語が転がりやすいと考えた。よく自分がイガイガのモデルかと聞かれるけど、全然そうじゃない。でも、イガイガの言葉は間違いなく(原作者の)僕から出ている言葉。イガイガは、僕みたいなゴルフオタクなんですよ」

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