現行の保険証廃止に根強い異論 「マイナ保険証」18紙アンケート 「残して」「選択制に」の声多く
健康保険証の廃止まで3カ月。熊日の「SNSこちら編集局」など読者とつながる報道に取り組む全国18の地方紙は、マイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」に関する合同アンケートを実施した。現行の保険証を残してほしいという意見が多く、廃止への不安も根強くあった。
アンケートは各紙が8月9~18日に通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ、1万2007人(熊本807人)が回答した。
「現行の保険証を残し、マイナ保険証導入をやめて」と「現行の保険証を残し、選択制に」がそれぞれ約4割で、ほぼ並んだ。
マイナ導入への反対意見では「任意のはずのマイナカードを強制されているようで、納得できません」(50代女性)、選択制を求める声では「認知症の親はマイナカードを作れません」(50代男性)などがあった。マイナ保険証を使う人でも、47・8%は選択制を支持した。
「現行の保険証をなくし、マイナ保険証に一本化」を支持した人は2割ほど。「効率化が図れるので、いち早く進めていただきたい」(40代男性)などの意見があった。
自由記述では「紛失時のリスクや手続きが心配」(60代女性)、「災害時や停電など、使えないときはどうするの」(60代女性)といったトラブル対応への不安や疑問が目立った。
「自分の情報が漏れないか不安」という問いに「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人も多く、マイナ保険証を使う人でも59・8%を占めた。
発行済みの現行の保険証は12月2日に廃止後も最長で1年間、使い続けられるが、回答者の約1割は「12月2日から使用できなくなる」と誤解していた。
カードを持っていても保険証として使わない人たちに理由を尋ねると、複数回答で「従来の健康保険証が使いやすい」(63・7%)、「情報漏えいが不安」(63・0%)が多かった。
マイナ保険証を使う人たちの理由は、「従来の保険証が廃止されると聞いたから」(48・0%)が最多。「病歴や薬歴を説明する手間が省ける」(38・4%)が続いた。
アンケートは多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。マイナカードを持たない人は回答者では35・6%で、実際は25・5%(7月末時点)。回答者の年代は、30代以下が9・8%、40~60代が71・6%、70代以上が18・6%だった。
「マイナ保険証」に関するアンケートを実施した18紙は次の通り。
東奥日報(青森)▽岩手日報▽河北新報(宮城)▽秋田魁新報▽上毛(群馬)▽東京▽神奈川▽新潟日報▽北陸中日(石川)▽福井▽信濃毎日(長野)▽岐阜▽京都▽中国(広島)▽西日本(福岡)▽熊本日日▽南日本(鹿児島)▽琉球新報(沖縄)
名古屋大の稲葉一将教授(行政法学)の話 マイナ保険証が基本になる新しい制度の正確な情報の周知が十分ではなく、国民の不安を払拭できていないと感じた。1年前に現行の健康保険証を廃止する法改正が議論されていたときから、あまり傾向が変わっていない。疑問や不安が解消されないまま保険証を廃止していいのかや、猶予期間の延長を国会は改めて検討していいのではないか。
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