「お客のため」安さにこだわり 観光盛り上げへ新業態も スーパー「みやはら」(阿蘇市)【地元発・推しカンパニー】
100円を切る青果類や200円台の弁当など、お得な商品が店内に並ぶ。物価高が続く中、阿蘇市内牧に本店を置く地域密着型のスーパー「みやはら」は、「店はお客のためにある」をモットーに、とにかく安さにこだわった営業スタイルを貫く。
1964年、宮原るみ社長(59)の父猛さん(故人)が阿蘇市一の宮町で創業。母ミツ子さん(86)の経営を経て2016年、宮原社長が引き継いだ。その年に株式会社化し、敷地面積が広い内牧店に本店を移した。現在は阿蘇市に2店舗、熊本市に3店舗を構える。
安さの秘訣[ひけつ]は、一度に大量に仕入れることと、安く売れないものは初めから扱わないこと。宮原社長は「その日の仕入れに合わせて、陳列棚の配置や商品の並べ方を自由に変えられるのは個人経営スーパーの強み」と強調する。
他店との違いを出すことにも日々知恵を絞っている。肉の特売日は一般的には毎月29日が多いが、みやはらは九九の「2×9=18」にちなんで毎月18日に設定。客を確保する工夫の一つだ。
07年、熊本市の第1号店となる東区の東バイパス店(旧たくま店)を出店。その後、中央区の下通店や南熊本店(旧田迎店)など順調に事業を拡大していった。
ところが、新型コロナウイルスがまん延すると状況は一変。22年度は、創業以来初めて赤字となった。20年3月にオープンした上通店(中央区)を、1年9カ月で閉店するなど追い込まれた。
「買い物回数を減らしたり、健康志向の商品を求めたりといった需要の変化に対応しきれなかった」と宮原社長。それでも「売り場面積が狭い上通店でお客の需要の変化をいち早く察知できたことが、他店舗の売り上げ維持につながった」と前向きに捉えている。
苦い経験を踏まえ、新たな総菜を開発し、阿蘇のブランド肉を積極的に取り扱うなど商品のバリエーションを増やした。こうした取り組みが実を結び、23年度は黒字回復した。
阿蘇の観光を盛り上げるため、今年から新たな事業にも挑戦する。阿蘇神社(阿蘇市)近くに3月、阿蘇の食材を使った和菓子店「あその姫」をオープン。4月には、観光客向けに着物レンタル店「和奏苑」を開業した。
宮原社長は「地域の人たちだけでなく、観光客にも阿蘇を好きになってもらえるような事業を展開していきたい」と話す。仕事を通して、地元に恩返ししていくつもりだ。(小田喜一)
メモ スーパー「みやはら」の前身は、宮原るみ社長の祖父寅喜さんが、阿蘇市一の宮町で営んでいた駄菓子店。現在は阿蘇市内に2店舗ある衣料品店「ファミリーパレット」や新事業の2店舗を含め、計9店舗を展開する。従業員は合わせて270人。
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