男女共通制服、生徒「自分らしく」 県内中学で導入増 スラックス、ポロシャツ…多様性や機能性に配慮
男女共通の制服(共通標準服)を導入する学校が、熊本県内の公立中学校を中心に増えている。多様性や機能性の観点から、生徒の選択肢を広げる狙いだ。生徒からは、「動きやすく快適になった」「人の視線を気にせずによくなった」と前向きな声が上がる。
夏休み目前の7月中旬、熊本市中央区の帯山中では生徒が男女共に、そろいの紺色のポロシャツ姿で授業を受けていた。中にはスラックスを着用した女子生徒も。一人一人の表情は生き生きと見える。
日によって、スラックスとスカートをはき替えるという2年の女子生徒は「スラックスは動きやすくて気持ちが高まる。スカートが苦手な女子も自分らしく生活できると思う」と笑顔で語る。
ほかの生徒からは「床掃除で雑巾がけをする時、スカートの裾が汚れるのが気になっていたので、スラックスをはけるようになって良かった」と〝スカートあるある〟の悩みの解決を歓迎する声や、「ブレザーではなく学ランを着たかった」とより幅広い選択肢を求める声もあった。
帯山中は1959年の開校以来「男子は学ラン、女子はジャンパースカート」だった制服を、23年度の入学生から一新した。ブレザーに統一し、スラックス、スカート、ネクタイ、リボンを自由に選択できるようにした。夏服は男女共通のポロシャツ。生徒の自主性を高めようと、衣替えの時期の指定も廃止した。気温や体調を基に、生徒それぞれの判断で制服を決められるようになった。
現在は原則的に1、2年生が新しい制服を着用している。夏場ということもあり、機能性や速乾性に優れるポロシャツの評判が高い。2年の男子生徒は「汗がすぐ乾くから快適」。2年の女子生徒は「紺色なので汗をかいても下着が透けないのがうれしい」と喜んだ。
生徒自身の意見で制服を変えた学校もある。菊池市の菊池南中は生徒会の発案をきっかけに、24年度の1年生から学ランとセーラー服を共通のブレザーとポロシャツに変更した。学校ではジェンダーに関する授業を取り入れ、教職員や保護者が学ぶ機会もあるという。
体育大会では男子がソーラン節、女子がダンスを踊っていたが、22年度から選択制にした。佐渡絢子教頭は「生徒発案で制服を変えることができ、自分たちの学校を自分たちでより良くしていこうという思いが芽生えたと感じる」と話す。
共通標準服の導入は、福岡市や神戸市など全国で広がっている。熊本県内では八代市と氷川町の全中学校で24年度から選択できるようになり、熊本市や宇土市は25年度から市立の全中学校で導入を予定している。いずれも既存の制服はそのまま残し、生徒はどちらも着用できる。
私立学校でも多様性に配慮する動きが出ている。女子校として歴史のある熊本市中央区の熊本信愛女学院中・高は、1961年から着用していた冬服を25年度から一新する。スカートは全員購入した上で、スラックスを選べる。
7月中旬の体験入学に訪れた熊本市の錦ケ丘中3年の女子生徒は「チェックのスカートがかわいいし、スラックスがあるのもいい」。母の結貴さん(46)は「時代の変化に伴い制服を変更している学校も多い。女子がスカートじゃなければいけない必要性は感じない」と好評だった。(後藤幸樹、上野史央里)
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