45年越しの夢、ロンドン公演へ　熊本拠点のアマロックバンド「THE HEAT」

　45年越し、憧れの聖地に立つ－。熊本を拠点に活動するアマチュアロックバンド「THE　HEAT」が10月、念願の英国・ロンドン公演に臨む。「紆余［うよ］曲折はあったが、夢の一つがかないつつある。今は周りへの感謝の気持ちでいっぱい」。リーダーの菊川雅三（ボーカル）＝菊池市＝は喜びをかみしめる。

　バンドは菊川と近所の幼なじみ4人が集まり1980年に結成。英国出身の世界的ロックバンド、ローリング・ストーンズに憧れ、「いつかはロンドンで演奏する」という夢を抱き続けてきた。2006年にはオヤジバンドコンテストで日本一になり、上海や釜山など海外でも演奏。熊本を代表するアマバンドの一つとして、現在は熊本市と八代市在住の58～63歳の6人で活動している。

　結成40周年を迎えた20年に遠征を計画したが、コロナ禍でいったんは断念。感染状況が落ち着いたのを見て、計画を再始動させた。

　10月5～10日、コーラス2人を加えた8人で渡英。トラファルガー広場で6日に開かれる「ジャパン祭り2024」に出演する。昨年は4万人が集まり、芸人のとにかく明るい安村が登場して話題になった。9日には多くの有名アーティストが出演してきた老舗ライブハウス「ダブリン・キャッスル」でライブを開く。

　「自分たちの好きなことをやって人の役に立つなら、これ以上のことはないでしょ」。バンドは、1995年の阪神大震災をきっかけに、チャリティー活動にも積極的に取り組んできた。新潟県中越地震（2004年）、熊本地震（16年）など大規模な災害が起きる度にバンド仲間やプロミュージシャンに呼びかけ、チャリティーライブを開催。夏川りみや大江千里、上田正樹ら趣旨に賛同した多くのプロとも共演してきた。

　40年以上もバンドが続いてきた理由の一つに、結成4年目に事故死したメンバーの存在がある。「ビッグになって存在を認められるまではやめない。あいつとの約束がある」と菊川。30年近く一緒に活動してきた林啓一（キーボード）は「菊川の強烈な個性に引かれ、生かすために集まっているようなもの。もちろん、みんなロックが大好きなんだけどね」と笑う。

　遠征にはもう一つの目的も。菊川は「現地とのコネクションをつくって、後輩たちがロンドンで演奏できる環境を整えたいと思っている。熊本や九州のアマバンドに海外で演奏する道を開きたい」と明かす。その気になれば、夢は実現する－。身をもって示してくるつもりだ。（坂本尚志）

　※楽器レンタル料やライブハウスのチケット負担など遠征費の一部をクラウドファンディング（CF）で募っている。CFサイト「モーション・ギャラリー」で26日まで受け付け。また、9月7日午後6時半からは熊本市中央区の熊本B.9で壮行ライブがある。前売り3千円（別途1ドリンク）。粟津さん☎090（3328）9989。