利用者「便利」「もっと停留所を」 熊本市のAIタクシー本格運用 運転手には戸惑いも

熊本日日新聞 2024年7月7日 22:00
公民館に設置された停留所で「チョイソコくまもと」から降りる乗客ら=6月27日、熊本市北区
公民館に設置された停留所で「チョイソコくまもと」から降りる乗客ら=6月27日、熊本市北区

 熊本市は植木地域と市西南部で、人工知能(AI)を活用した予約制の乗り合いタクシー「チョイソコくまもと」の運行を1日から本格化した。植木地域で6月19~29日にあった試験運行で、利用客の多くは「便利が良い」と評価する一方、運転手は慣れない運行方式に困惑。一部の住民からは、生活圏の山鹿市や玉東町などに停留所を設置するよう望む声も上がる。

 6月27日午前9時前、雨が降りしきる植木町岩野の北区役所。玄関に滑り込んだチョイソコの車両から、女性(73)が降りてきた。女性は車を所有するが、「視界の悪い雨の日や夜は車を運転しないようにしている。今日は歯医者の予約を入れていたので、通院できて良かった」と感謝した。

 植木地域のチョイソコは、JR植木駅やバス停、病院、商業施設など約300の停留所を最大2台のタクシーで結ぶ。料金は1人1日300円(小学生以下100円)。障害者手帳などを提示すると100円になる。

 路線バスのように規定のルートや時刻表はなく、利用客の予約に応じてAIが最適ルートを決める。鉄道や減便が続く路線バスなど〝線〟の公共交通を、多くの停留所を持つ〝面〟のチョイソコで補う狙い。植木地域と市西南部のほか、市東部を中心に小中学生の送迎支援でも運行している。

 植木地域では試験運行期間のうち7日間で176件の予約があり、延べ207人が利用した。年代別の予約状況は60歳以上が約8割。降車した停留所は商業施設と病院が各3割、区役所などの官公庁と駅・バス停が各2割だった。市移動円滑推進課は「車両や台数、運行エリアなどが異なるため一概に比較できないが、西南部の実証実験より利用が多い」と分析する。

 一方、運行を担う地元タクシー会社の運転手らは初めてのAIタクシーの業務に戸惑う。運転手の一人は「次から次にお客さんを送迎して、小便に行く時間もない」。別の運転手は「2台では足りないように思う」と話す。同課は「効率性と運転手の業務負担のバランスを取り、送迎の間隔を調整したい」としている。

公園の掲示板に掲げられた「チョイソコくまもと植木」停留所の看板=6月27日、熊本市北区
公園の掲示板に掲げられた「チョイソコくまもと植木」停留所の看板=6月27日、熊本市北区

 植木地域の北東や西の端に居を構える住民からは、生活圏の山鹿市や玉東町などにも停留所設置を求める声がある。同課が試験運行前に、自治会長らを中心に停留所の希望を聞いたところ、9校区・地区のうち五つが熊本市外への設置を要望したという。

 植木町北東部の吉松校区は65歳以上の高齢化率が4割を超える。自治協議会会長の橋本広一さん(68)は「かかりつけの病院が山鹿市にある高齢者も多い。山鹿市内の病院にも行けるようになるといい」。町西部の田原校区自治協議会の谷口憲治会長(76)は「隣の玉東町まで行けるとうれしい。だが、まずは皆で積極的に利用したい」と話す。

 同課によると、本年度の植木地域と西南部の本格運行と、植木地域の試験運行の費用は計約2800万円。同課は植木地域のチョイソコについて「運行台数などには限りがある。多くの方に利用してもらうため、今回はエリアを地域内に限定した」と説明。熊本市外への移動は「バスなどの交通機関を乗り継ぐなどしていただきたい」と理解を求めている。(石井颯悟)

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