「食料の安定供給へ環境整備」 自給率や農地確保で目標設定 農業基本法改正で坂本農相インタビュー
「農政の憲法」とされる食料・農業・農村基本法が、6月に閉会した通常国会で1999年の制定後、初めて改正された。坂本哲志農相(衆院熊本3区)は熊本日日新聞の単独インタビューで「2025年度からの5年間を集中期間とし、農業の構造改革を進めていく」と強調。万が一の「有事」にも対応できるよう、食料安全保障の確保、強化に意欲を示した。(聞き手・中尾有希)
-改正法は食料安保の確保を基本理念としました。
「法制定から25年が経過し、世界的な情勢が大きく変わった。ロシアのウクライナ侵略といった地政学的リスクや気候変動、世界的な人口増に加え、国内の農業従事者の高齢化も深刻だ。あらゆる事態を想定し、国民に食料を安定供給できる環境整備を図っていく必要がある」
「本年度中に、改正法に沿って(中長期的な農業施策を示す)『食料・農業・農村基本計画』を改定し、食料自給率や農地確保についての具体的な目標を分野ごとに立てる。5年間の集中期間では、その原動力となる予算をしっかりと確保していく」
-国会審議では、与野党が一致点を見いだせないテーマもありました。
「国内生産の増強と農地確保、農業人口減少をどうカバーしていくかという点を中心に、関連3法を含めて論議した。農家の所得補償に重点を置くべきだという指摘もあり、与野党間で意見の相違はあった。しかし、麦や大豆といった自国で生産可能な作物の自給率を高めていくという方向では一致できた」
-農家が農業を続けられるよう、生産コストの価格転嫁を後押しする規定を盛り込みました。
「これまでは生産のための政策が重視されてきたが、これからは生産、加工、流通、小売り、消費の5段階を一つのシステムとして捉え、各段階で合理的な価格を決める仕組みが必要だ。消費者に生産コストが見えるよう工夫し、理解した上で農産物を買ってもらえる環境を整えるため、法整備を含めて考えたい」
-関連3法のうち「食料供給困難事態対策法」に罰則規定を設けたことに、熊本県内の農家からも不安の声が出ています。
「(有事に)立ちゆかなくなる前に、日本全体でどれだけの食料供給量があるかを国が把握することが法の目的だ。20万円以下の罰金規定は、有事の際に国が指示する生産計画の届け出に応じない事業者が対象で、個々の農家に増産や作物転換を強制するものではない。買い占めといった混乱状況に陥るのが一番怖い。民間の備蓄量などを示すことで、混乱を防ぐ目的もある。関係者に誤解を与えないよう法の内容を丁寧に周知していく必要がある」
「農業者が高齢化する中、有事に必ずしも増産できるとは限らない。輸入相手を多国化することも重要だ。一方で、国内人口は減少し、食料需要自体は減っていく。平時は輸出に力を入れることで、いざという時に国内需要へ振り向けられる。5月に視察したタイでは、日本の農産物や水産物が非常に高い評価を得ていた。日本をアジアの食料供給拠点にしたい」
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